これに対し、「日本の小学校のほうがいいよ」と言うのが友人の望月パウロさん(三世)。
16歳で来日し、同じく日系ブラジル人女性と結婚。6歳の息子は日本の小学一年生。理由は、「ブラジル人学校は学費が高い。日本の学校は設備がしっかりしているし、いろんなことをやれる。それに学童(放課後学級)で夕方まで預かってもらえるから共働きできるし、宿題も手伝ってもらえる」。
夫婦ともに日本語は得意ではないが、学校からの配布プリントは、日本語の得意な友人に携帯で写真を撮って送り、大事なことを教えてもらっている、とのこと。帰国予定は「静岡に大地震がくるまで」と笑う。
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田舎娘の格好が可愛らしい内山田みゆきさん(13、三世)は昨年、小学5年生を終えてエスコーラに転校した。それまでは幼稚園からずっと日本の教育。学校習慣の違いに最初は驚いたという。
編入の際に3年生の学年から始めることになった。「転校することにしたのは2、3年後に家族で帰国するつもりだから。とても楽しみ。ブラジルで大学に行って将来は保育士になりたい」と笑顔で話してくれた。
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帰伯の予定はないものの小学校から同校へ転校してきたのは、北村ニナさん(14、三世)。クラスでは活発に日ポ両語で発言している様子が見られた。
二人の姉は共に日本の中学まで卒業したが、父のルイスさんはずっと日本の学校への不信感があったという。
「学力が足りなくても進級できるのはよくないと思う。ニナは5年生のとき3年生までの学力しか身についていなかった。他にも問題があったが、明らかにしようとしない。おかしいと思ったことはなんでも学校に聞いたが、とりあってもらえず、教育委員会へ話に行ったが、ちゃんと聞いてもらえなかった。我慢できなくなってニナは学校を替えることにした」。
非日系の母、マイラさんは、「上のふたりは学校に任せっきりだった。子供のほうからも話してこなかったから、うまくいっていると思っていた。でもそれでは遅かったのね。ふたりとも中学を卒業したら高校には行かないと言った」と悲しげに話す。「エスコーラが完璧なわけではないから、たまにニナには、日本の学校に戻らないかと聞く。職業は関係ない、子供には生き生きとしていてほしいの」と思いを吐露する。
一方、ニナさん本人は「将来はイラストのデザインの仕事をしたい。それには専門学校かな。でも大学にも興味があるんだ」と日本で進学する夢を語る。
「親として常に不安ですね。とにかく娘には学びたいという意欲を持って学校へ行ってほしい」。父ルイスさんは、携帯電話の待ち受けにしているニナさんが描いたイラストをじっと見つめながら、そうつぶやいた。(つづく、秋山郁美通信員)
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