8月初旬にジウマ大統領によって裁可された「プロフット法」には、サッカークラブは庶民的な価格でチケットを提供しなくてはならないと規定されているが、その枚数や価格は明文化されていない。ブラジルのサッカーチケットの値段は、社会経済的に低い階層の人々にとって、世界で一番割高となっている。
その国の最低賃金を稼ぐ労働者が、最も安いチケットを買うために必要な労働時間は何時間だろうか。
ロンドンのサッカー・ビジネスの大学でスポーツマネージメントの講義を行うブラジル人のオリバー・サイツさんは、各国の最低賃金を就労時間で割り、時給を算定した後、その時給で最低チケット価格を割って「何時間働けばチケット代を稼げるか」を指数化した。国の指数はチケット需要の高いと思われる直近の優勝チームで算定するものとする。
ブラジル全国選手権で昨年度優勝したクルゼイロの場合、サポーターがチケットを買うのに必要な労働時間は10時間と18分。つまりクルゼイロファンがホームゲームを観戦したい場合、週40時間の労働時間のうち、4分の1に当たる10時間をチケット代を稼ぐためにささげなくてはならない。交通費や駐車場代、ガソリン代、食費は除いてもだ。対照的なのはドイツで、バイエルン・ミュンヘンの試合を観戦するために必要な就業時間は1時間48分にすぎない。
ブラジルのサッカーのチケット価格は他のすべての主要国と比べても割高だ。
10時間と48分の労働を必要とするクルゼイロは、ブラジル全国選手権1部の平均値に非常に近い。数チームは少し安いが、ずっと高いチームもある。
欧州主要6カ国リーグの平均は4時間15分(4・25時間)で、それにブラジル最低賃金から算出される時給4・85レアルをかけた場合、適切なチケット最低価格は20・63レアルとなる。
サッカースタジアムのために理想的なのは、入場料収入でチームに旨みが充分にある位、チケット価格が高く、観戦したい人なら誰でも手軽に買えてスタジアムが満員になるほど充分にチケット価格が安い事だ。
スタジアム占有率4割のブラジルも、チケット代を下げれば、空席のままの観客席の多くを埋めることが出来、入場料収入を得る事が出来るのではないだろうか。貧しい階級の人々や、W杯でスタジアムが近代化してチケット代が上がってしまったためにスタジアムから去ってしまった人々(それまではチームを応援するために平日も週末も無くスタジアムに通っていた人々)を呼び込み、空席を埋めることが出来た上、収入も増えるなら、チケット値下げは主催側、ファンの双方にとってベターな道となるはずだ。(28日付エポカ誌サイトより)
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