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リオの天才少年の30年後=メキシコでビール会社を切り盛り

 「この子は天才だよ!」―。有名TV司会者のシルヴィオ・サントスが叫んだのは30年ほど前のこと。10歳に満たない少年は拍手と共に舞台中央に現れた。目を瞑り、集中してサントスの声に耳を傾ける。「387たす429たす926は?」とサントスが言い終わる前に、少年は「1742」と答えた。それは当時の計算機を上回る早さだった。
 少年の名はリカルド・タデウ・ソアレス。その後も彼の才能は伸び続け、12歳の時、8年生にして大学に入学。昼間は義務教育、夜は大学に通い、16歳にして法学部を卒業。「世界最年少の弁護士」としてギネスブックにも載った。
 当時の新聞、TVはこぞって彼を追いかけた。今は彼の取材アポイントを取るのは簡単ではない。むしろ昔のことなど思い出したくもないようだ。
 今は、ビールのシェア、売り上げ高共に世界一のABInBevの子会社で、メキシコに本社を置くグルポ・モデロを率いている。
 13年6月の社長就任以来わずか2年で、グルポ・モデロはABInBevのブラジル子会社Ambevを収益率で抜いた。これはこれまでに無かった偉業だ。
 メキシコ全体でビールの売り上げが落ちていたのと時を同じくしてグルポ・モデロ社長に就任したソアレスは、17年までにグループの経費を10億ドル削減する事を目標に掲げ、就任した週に会社所有のサッカーチームを売却した。「いくら私がサッカーが大好きでも、プロチームのスタメンに口を挟めないよ」と当時の売却の意図である「本業にもっと本腰を入れる」をほのめかすように語った。
 その後も4千人の従業員を解雇して人員整理を行う、配送用のトラックの積載率を50%から80%に引き上げるなどして、経費削減と業績アップにつなげ、既に7億7千万ドルを節約した。
 彼の父親で弁護士のジョゼ・パウロ・ソアレス氏は、「あの子は早熟であっただけでなく、並外れて賢かったため、物事の先がすぐに見えてしまうところがあった。だから逆に物事の運びが遅く感じられてイライラしてしまうところさえあった。あの子は3歳で姉に読み書きを習っていたし、9歳の時には自分で推理小説を書いていた」と振り返っている。(8月31日付エスタード紙より)