【既報関連】16年度の予算案をまとめるに当たり、1997年~2007年に採用された金融取引暫定納付金(通称銀行小切手税・CPMF)復活を目論んでいた連邦政府が、テーメル副大統領、レナン・カリェイロス、エドゥアルド・クーニャ上下両院議長を始めとした政界や、企業関係者からの反発を受けて復活を断念した。これを受け、来年度予算案は期限末日の8月31日に、歳出額が歳入額を上回る「赤字予算」として提出されると8月29~31日付伯各紙が報じた。
ジウマ大統領は8月27日午後、テーメル副大統領にCPMF復活のための助力を要請する電話をかけたが、同報を同日付の新聞報道で初めて知り、不満を抱いていた同副大統領はこれを拒否、議会への説得工作も拒否した。
CPMFによる税収は保健医療方面に限定して振り分けるとの説得も功を奏さず、各方面からの反対に直面したジウマ大統領は8月29日、CPMFの復活を事実上断念した。連邦政府はCPMFで700億レアルの増収を見込んでいた。
CPMFの復活見送りで、16年度の基礎的財政収支の黒字目標である国民総生産(GDP)の0・7%は引き下げられる可能性が濃厚となっており、労働者党(PT)政権の看板政策である社会政策関連の経費削減も起こりうる。
ジウマ大統領はこの決定を連立与党の党首達に伝えた。政府関係者によると、大統領は「現実的で透明性の高い」予算案を提出する事を選択したとしている。
ジョアキン・レヴィ財相は、赤字予算の公表は諸外国や投資格付け評価会社からのブラジルへの評価を下げる一因になりかねないとの懸念を表明したが、政策担当の主要閣僚らとの議論の末、赤字を公にして議会に現実を見せる事で、徐々に歳入増を図り、将来的には再びCPMF復活の道を探る、または社会保障の見直しというより困難な改革の実現を図るという政府の戦略に納得した。
なお、8月31日付G1サイトなどによると、8月31日にレヴィ財相とネルソン・バルボーザ企画相の手で上院議長に手渡された16年度予算案は、歳出額が歳入額を305億レアル(GDPの0・5%)上回る赤字予算となっている。同予算案は、GDP成長率を0・2%、年間インフレ率は5・4%、最低賃金は865・50レアルとして作成されており、税収額は850億レアルと見込まれている。