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国籍欲しさにマイアミへ=新生児胸に帰国するママ達

 サンパウロ州在住の企業家のビアンカ・ザッドさん(37)は、マイアミへの旅行の後、荷物を満載したトランク以上に大切なものを抱えて帰国した。
 彼女が胸に抱いて帰ったのは、5月22日にフロリダ州の病院で生まれた長男のエンリコ君だ。「この子を妊娠する前から、生むなら米国でと考えていた」というビアンカさんは、「米国で生まれれば自動的に米国籍が取れるから、将来、きっと役に立つと思って」と説明する。
 米国で生まれた子供は誰でも米国の市民権を得る事が出来るため、ブラジルから観光ビザで入国し、米国で出産後、米国籍を持つ子供と帰国するつもりの女性は増えており、「マイアミでお母さんに」という名前のパック旅行を用意する会社も出てきている。
 この会社は、マイアミで17年間、小児科医として働いているブラジル人医師のウラジミル・ローレンツさん(46)が立ち上げた。ローレンツさんはロシアに同様のサービスがある事を知って、知人と共に会社を創設。2週間前にサイトを立ち上げ、9月からブラジル人旅行客を対象とするサービスを始めたが、既に4人の女性が関心を示しているという。
 航空会社は月数が進んだ妊婦を飛行機に乗せる際には医師の診断書の提出を要求するが、妊婦が飛行機で旅行する事を禁じる法律はない。ローレンツ氏は、飛行機に乗り込む前に産科医の診察を受ける事と、できれば妊娠7カ月目までに渡米する事を勧めている。
 ローレンツ氏の会社では、自然分娩9840ドル、帝王切開1万1390ドル、双子またはそれ以上の妊娠1万4730ドルの3種類のパックを用意しているが、この額には出産前後の診察と最大3日間の入院、母子双方が必要とする基本的な検査の費用が含まれる。
 ローレンツ氏は「サンパウロに住んでいる妊婦がラッシュ時に産気づいたりすれば、病院に移動する最中に生まれてしまうケースや、サービスの質が悪い病院に連れて行かれる可能性もあるが、このパックならそういった心配は一切無用だ」と胸を張る。
 米国で生まれた子供に米国籍を取らせるには、現地の登記所で出生届を出し、米国政府が指定するセンターに連れて行かなければならないが、手続きは20分程で済み、20日程度でパスポートが郵送されてくる。
 その上で在米のブラジル領事館に出向いて出生届を出せば、ブラジルと米国双方の国籍が取得でき、両国のパスポートを持っての帰国となる。
 ただし、米国生まれの子供がいる事だけでは、両親が同国に住む権利は保証しないので注意が必要だ。子供に米国籍を取得させるために米国で出産をと考える女性や家族は増えており、2016年の大統領選の話題の一つにもなっている。
 妊娠9カ月のイレネ・キムさん(33)は子供服などを買うために7月にマイアミに着いたが、買い物の途中で気分が悪くなった後、出産前に飛行機で帰国すれば血栓などが起きる危険性が強い事と、米国で生まれた子供は自動的に市民権を得る事ができる事がわかったため、現地で出産する事に決めたという。(8日付G1サイトより)