ブラジル南部サンタカタリーナ州(SC州)州都のフロリアノーポリスに本拠を置く、サッカー全国選手権1部「アヴァイーFC」に一人の日本人FW(アタカンチ)がいる。日本でのプロ経験のない東城利哉(22、東京)だ。プロサッカー選手になる夢を持って4年前、ブラジルに単身飛び込んだ若者の経験と意気込みを聞いてみた。(敬称略、井戸規光生記者)
「初めまして、東城利哉です」。8月15日、控え組の選手で行われた練習試合で必死に走り回り3得点、終了の笛と共に倒れこんだ同選手に近づくと、そうフルネームで挨拶してきた。
サッカー界で生き抜くのに不可欠な強い人間性を感じさせる。練習後も独りで走りこみをするなど自己管理も怠らない。
18歳まで川崎フロンターレのユースチームに所属していた東城は、高校卒業と同時に渡伯する。リオ州選手権1部のフリブルゲンセでプロのキャリアをスタートさせ、リオ州選手権フルミネンセ戦では、あのマラカナン・スタジアムでもプレーした。
同チームで東城は着実に実績を積み、その活躍は昨年、全国選手権2部のアヴァイーFCの目に止まり、同年4月に移籍した。ビザの関係で正式プロ契約は同年10月まで延びたが、アヴァイーFCはその年15年の全国1部昇格を決めた。
しかし移籍以来、公式戦出場はまだない。腐らずに練習で必死にアピールを続ける東城は、5月の全国選手権開幕早々、フラメンゴ戦で初めて「ベンチ入り」のチャンスを得た。その後もベンチ入りの機会こそあるものの、デビューの時は訪れていない。
「焦らず毎日、やるべきことをしっかりやる。勝手なプレーに走らないでチームを勝たせるプレーに徹する」。そう語る彼の目は輝きを失っていない。
昨年6月のW杯、日本代表の戦いぶりについて質問すると、言葉を選びつつも「外から見ていて、気持ちが伝わってくるものが少なかったとは思う。少しくらいミスしようが、相手とぶつかって倒れようが、日本みたいに『ゴメン』なんて言っている暇もない。チームはファミリー、味方が乱暴なプレーをされたら、全員で相手選手、審判に詰め寄る。次の接触プレーでやり返さなかったら仲間と認めてもらえない。日本は技術、パスワークを土壇場の状況でも出せるようにしないと」と続けた。(つづく)
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アヴァイーFCの東城選手は、数日のオフがあれば飛行機に乗ってサンパウロ市を訪れている。「リオよりもサンパウロ市、特に東洋街の『KAZU』や『甚六』がお気に入り」。取材時の土曜日、「明日の試合、メンバー入りでもちろん嬉しいですけど、仮にメンバーから外れたらこのままサンパウロ市に行くつもりだった」との事。先発11人とベンチ入りメンバーはホームゲームでも試合前日からホテル入りし、体を休め、集中力を高めるのだという。異国で食べるラーメンの味は格別だろうが、一部リーグ初出場の〃味わい〃には比べられない?