ホーム | ビジネスニュース | S&P=ブラジルを突如優良国から外す=16年赤字予算案がダメ押し=急展開に連邦政府は動揺=支出削減はこれで不可避に
バルボーザ企画相が参加した9日の上院での会議風景(Jonas Pereira/Agência Senado)
バルボーザ企画相が参加した9日の上院での会議風景(Jonas Pereira/Agência Senado)

S&P=ブラジルを突如優良国から外す=16年赤字予算案がダメ押し=急展開に連邦政府は動揺=支出削減はこれで不可避に

 国際的な投資信託の権威である米国のスタンダード&プアーズ社(S&P)が9日、ブラジルの格付ランクを突如、「優良債権国」から外す決断を行った。これを受け、国外投資の減少やさらなるドル高が起き、この先の国内総生産(GDP)にも響くことは必至の情勢となった。10日付伯字紙が報じている。

 S&Pは9日、ブラジルの投資格付けランクを「投資に値するレベル」最低位のBBBマイナスから、「投資を考慮する必要がある」の最上位のBBプラスに落とした。
 GDPの低成長や、ラヴァ・ジャット作戦によるペトロブラスの破綻、政治危機などで、ブラジルの優良債権国からの転落は時間の問題と見られていた。だが、経済関係者や当の連邦政府も、9日のS&Pによる格下げは寝耳に水だった。格下げは年末か来年になってからと思っていたためだ。
 連邦政府は正式発表の3時間前にS&Pから格下げ決定を知らされており、ジウマ大統領はネルソン・バルボーザ企画相とアロイージオ・メルカダンテ官房長官を招集して緊急会議を行った。この両者は2016年度に305億レアルの赤字を見込んだ予算案提出を勧めていたが、S&Pの格下げは、この予算案が後押しした形となった。
 格下げの報を受け、バルボーザ企画相は「ブラジルはかつても経験し、他の国も通ってきた変化の過程にある」と語った。また、パリで行われた経済協力開発機構(OECD)の会議から帰国したばかりのジョアキン・レヴィ財務相は「連邦政府は、世界的に先行き不透明な世の中で緊縮財政が不可欠なことを理解した」と語った。
 レヴィ財務相は、S&Pをはじめ、ムーディーズやフィッチなどの投資信託の権威にブラジルの状況を伝え、格下げを起こさないよう舵取りをしていた。ム社とフ社の格付けはまだ優良債権国のままだが、ム社ももうひとつ落ちるとS&Pと同じ判断となる。
 これで連邦政府の財政は一層苦しくなるが、S&Pによる発表直前、ジウマ大統領はGDPの0・7%という16年度の財政収支黒字目標達成のために出費削減を行うと発表した。財政支出削減を増税より優先する案は、ミシェル・テメル副大統領はじめ、レナン・カリェイロス、エドゥアルド・クーニャ上下院議長らも求めていた。
 このS&Pの判断は、10日の為替や株式にすぐに反映された。為替は9時30分台に3・90レアルを超えたが、中銀が介入すると発表されてからやや落ち着いた。一方、9日に0・22%下落したサンパウロ証券取引所の指数は、10日も午前10時11分に2・28%下落したが、同1時49分には0・35%上昇など、荒れた動きを見せている。