8月16日の地元コリンチャンス戦、22日の敵地サントス戦を試合前のホテルや競技場での取材を許された。
先発、控えを問わず、次の試合に帯同が決まった選手達は前日の練習直後に、地元での試合の場合は市内のホテルに、遠征試合の場合は空港から遠征地まで移動する。団体行動で試合への英気を養い、集中力を高める事が最優先されるため、ホテルの敷地に出る事さえかなわない。
サントスの海岸沿いのホテルで、「チームに帯同してブラジル中飛びまわることも良い経験」と語る東城。「2年前にサントスの試合を、観客として観に来た事がある。選手として戻ってこられてワクワクしている」と語った。
「出たら点を取るイメージは常に持っている」と語る東城は、対戦相手のディフェンダーの特徴を頭に入れ、試合の流れに注意を払いつつ、ピッチの脇でチームメイトとウォーミングアップのダッシュを繰り返していた。交代枠は3人まで。1人、2人と呼ばれていき、3人目に声が掛かると、残りの選手はベンチに引き上げていく。
90パーセント以上敵の地元ファンに囲まれたサントス戦では、「おい、日本人が何しに来やがった」と、当地としては実に控えめな野次を飛ばされていた。結局、東城はいずれの試合でもベンチ入りを果たすが、交代出場はならなかった。
アヴァイーFCはコリンチャンス戦を1―2、サントス戦を2―5で落とし、9月10日現在で2部降格圏の18位に沈んでいる。
異国でしのぎを削る東城は、慣れない環境への適応という試練も乗り越えてきた。「日本は快適過ぎて、それが当たり前だと思っていたが、ブラジルでそれが覆された」。
ブラジル人の温かさにも触れ、州都の日系人とも交流している。「彼らにも感謝しきれない。100年以上前に何もない状態で移住してきて、今の一目置かれる立場を築いた日本人の事を誇りに思う。自分もここに足跡を残したい。少しでも長く戦い続けたい」と語る。 東城は「1部に上がってきたばかりのアヴァイーFCは、他のチームから小規模クラブと思われているかもしれないけど、気持ちでは負けていない。選手の質にそれほど大きな差はない」と続けた。
全国選手権も折り返しを過ぎ、佳境を迎えつつある。もしやアヴァイーFC1部残留の救世主となりえるか―。今後に期待が寄せられる。(終わり、敬称略、井戸規光生記者)
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東城選手に試合の前日、土曜の練習後にインタビューをした。途中で「もう試合前泊のホテルに向かうチームのバスが出るから行かなくては」とお開きに。アヴァイーFC運営スタッフの仰天アドバイス「チームバスにカローナ(相乗り)頼んでホテルで話の続きを聞けば?」とのこと、来伯一年余り、だいぶ厚かましくなった記者もまさかそこまで頼むのは憚られたが、「断られても別に失うものはない」のダメ押しアドバイスで、恐る恐るチームマネージャーに頼むも当然返事は、「ナォン(それは無理)外部の人間はたとえ選手の家族でも乗せられない」とのこと。至極ごもっとも。同じチームスタッフで見解がバラバラなことにも驚いた。