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第44回 日本人が信じられないブラジルの不都合な真実 ④

 ブラジルで仕事をしていると、最初はブラジル人の計画性の無さにイライラしたり、腹を立てたりするが、その裏に潜む真実に気づくとしょうがないと思えるようになってくる。
 日本企業も欧米企業もブラジル進出にあたって、当然ながら事業計画やスケジュールを立て、それに準じて進めようとするわけだが、まずはお役所の壁にブチ当り、立ち往生させられることも少なくない。進出の担当者も事前に何度もブラジルに足を運び、色々な人にヒヤリングをしてから計画を立てている。
 ところが、一カ月前に調査にきた時の話では二週間で出来た手続きが、同じ役所に行っても平気で2~3カ月かかったりする。今まで必要なかった書類が急に必要になったり、これまでは書類提出で済んだものが、突然訪問確認によるチェックが必須になっていたりと、手続き内容もコロコロと変わる。変わったと思ったら、またすぐに元に戻ったりもするので、たちが悪い。
 そして極め付けは、ルールは変わっていないのに、担当が違うと時間がかかったりすることだ。訳のわからないというか、はっきりしているというか、ああだから、こうだから、あといくらかかると言ってくる。これを突っぱねることもできるが、すると当初の予定通りにはいかなくなる。途上国、新興国ではどこでもあることとはいえ、悩ましいところだ。 このような担当者の作為の無作為とでも言うべきことは、ある意味オペレーションレベルの話ではあるが、もう一つ爆弾がある。突然の法律変更だ。
 もちろん、法律はある日突然できるわけではないので、丹念にお金も使ってブラジリアの動きをウォッチングしていれば、どういう法案が出されていて、今どの段階まで議論が進んでいて、いつ頃議会を通過しそうかは、ある程度大雑把には推測はつくが、実際に施行されるのは、かなり政治的な判断や駆け引きに利用されたりするので、予測が難しい。
 例えば、ある政党のファミリーの人たちに仕事を増やす必要があるときに、突然施行されるということもない話ではないようだ。そうすると、素人なのに権限を持った人が許認可部門に入ってきたりするため、途端に法の運用面で混乱したりする。その結果、許認可が当初の予定よりも、半年から2年遅れたなんてことも日常的に起こっているのだ。
 同様のことが日常の個人レベルでも起こる国で、長期的な計画を立てることに徐々に意味を感じなくなるのも、ある面ではやむを得ないのかもしれない。それよりも、このようなイレギュラーが日常のブラジル人たちにしたら、新たに立ち現れてくるイレギュラーにその場その場でいかにうまく、損をせずに対処するか、その融通性が問われることになってくる。
 これは逆にがっちりとした絶対的な計画という固定観念があると、臨機応変に最善策を講じることができなかったりする。そのため、余計にお金と時間がかかってしまっているケースも多いようだ。
 計画好きで、一度決めたら変更が嫌いな日本人にとっては、イレギュラーなことが日常的で、当初の計画通りにはちっともいかないブラジルは、非常に不都合な国と言えるかもしれない。しかし、真実は真実として懐深く受け入れて、計画は立てながらも、あらゆるケースを想定した動きができてくると、抜け道が見えてきたりするものだ。ただ、日本の本社にも懐を深くしてもらうのはなかなか難しいかもしれないが。(つづく)

[su_service title=”輿石信男 Nobuo Koshiishi” icon=”icon: pencil” icon_color=”#2980B9″ size=”28″] 株式会社クォンタム 代表取締役。株式会社クォンタムは1991年より20年以上にわたり、日本・ブラジル間のマーケティングおよびビジネスコンサルティングを手掛ける。市場調査、フィージビリティスタディ、進出戦略・事業計画の策定から、現地代理店開拓、会社設立、販促活動、工場用地選定、工場建設・立ち上げ、各種認証取得支援まで、現地に密着したコンサルテーションには定評がある。  2011年からはJTBコーポレートセールスと組んでブラジルビジネス情報センター(BRABIC)を立ち上げ、ブラジルに関する正確な情報提供と中小企業、自治体向けによりきめ細かい進出支援を行なっている。14年からはリオ五輪を視野にリオデジャネイロ事務所を開設。2大市場の営業代行からイベント企画、リオ五輪の各種サポートも行う。本社を東京に置き、ブラジル(サンパウロ、リオ)と中国(大連)に現地法人を有する。[/su_service]