22日、ブラジルの外国為替市場は1ドル=4・054レアルで取引を終えたと23日付伯字紙が報じた。レアルの対ドル相場が、1ドル=4レアルの水準を突破したのは、94年7月1日にレアルが導入されて以来初めてだ。これまでのレアル最安値は02年10月11日の1ドル=3・990レアルだった。
「もはや無駄に出来る時間はない」とジウマ大統領は語った。
21日までの政府側の戦略は、70%に及ぶ法曹関係者の給与調整や、年金支出の増大を含む議案などに対してジウマ大統領が行使した拒否権を議会が否決して、歳出が増える事がないよう、議会での審議の日程を遅らせることだった。その理由は拒否権を否決するのに充分な票は集まっていないと踏んでいたからだが、「9・22、1ドル4レアル突破」はシナリオを一変させた。
ジウマ大統領は民主運動党(PMDB)と、連立与党に呼びかけ、歳出増に直結する〃爆弾法案〃への拒否権行使への審議を即座に行い、拒否権拒否を行わないよう、協力を要請した。
ドル高に加え、歳出増法案まで許せば、次なる信用格付引き下げは避けられなくなる。
「16年度の赤字予算提出、スタンダード&プアーズ社によるブラジル格下げ、議会承認が困難な財政改善プラン、連立与党内の分裂傾向、更なる歳出増大の危険性に米国の利上げ懸念も相まって、ドル高騰に拍車がかかった」と投資会社部長のジョゼ・ファリア・ジュニオール氏は語る。信用格付会社のフィッチ関係者が、22日にジョアキン・レヴィ財相と会合を開いた事も市場に不安感を広めた。
一向に高騰の止まらないドルの影響を強く受けているのが、ドル建てで債務を抱えているペトロブラス社(PB)だ。
PBの債務はドル高騰により、9月末までに5130億ドルに達する可能性がある。これは14年のブラジルの国内総生産(GDP)の9・4%に相当する。PBの債務の7割は外貨建てで、相場変動に極めて弱い体質が浮き彫りとなった。
市場の反応は素早く、22日のPBの株価は、普通株で3・13%、優先株で4・52%下落して、04年以来の最低値をつけた。
ブログ「WhatsCall」運営のフラビオ・コンデ氏は、現在PBが抱えている負債のうち、600億~1千億レアルはジウマ大統領の失政によるものとし、「PBにとって、債務負担は長年の課題だった。一つだけ解決方法があるとすれば増資だが、今はその時ではない」とした。
なお、23日もドル高は変わらず、一時、1ドル=4・1457レアルに達し、中央銀行が介入を開始したが、午後4時46分には1ドル=4・1472レアルも記録。同52分現在は1ドル=4・1429レアルと報じられた。