最近来パしたIMF(国際通貨基金)の専門家ミッションの検討課題の一つに、大蔵省の関心事項である協同組合に対するIVA(付加価値税)の課税についての助言の件があった。
ちなみに、この組合に対するIVA徴税法は組合法の事前修正を要するが、大蔵省は〃逆通行〃で国会下院による異常な課税の法案を画策した経緯がある。
そして、その原案は国会上院であらかじめ国家中央組合院のコンセンサスの許に可決後、(組合法第439/94号の中27ヵ条を修正した法律第5501/15号)改めて下院へ回され、下院は更に独自の箇条を加えてこれを批准し、行政府へ公布の為に回付したもので、大蔵省はこの〃思う壺〃の結果に喝采した。
組合業界は厳しく論難
しかし、今回承認されたこの新法律は単にIVAの課税に限らず組合組織の内政干渉にまで及び、組合幹部の選出に異様な「ドント方式=議席配分方式」をもって役員の割り振りを決めるとするもので、組合関係者の憤懣と錯綜を招き、正に違憲法制として組合業界より厳しく論難される事態を惹き起こした。
元々IVAは、IMFによれば、大別して、世界で支持者と反対派の勢力が相半ばする。強いて言えば、前者は有力な事業家層のグループで、後者は遥かに数では勝る各階層の人達で構成されている。
付加価値税の始まりは第2次世界大戦の直後にさかのぼり、戦禍で荒廃した世界経済再建の一手段として発祥した賦課課税だが、既に戦後70年を経た今日では、当時とは大局の情勢が大いに異なり、現代の経済条件には必ずしも即さないにもかかわらず、IMFは依然としてこの時代遅れのIVAを支持しているのである。
全てのIMF政策の暗黙の前提は、同基金が定める方針に従い、当該対象国は国家の財源の割り当てと配分の責任を負うものとしている。
同政策は一般に短期間のプログラム実施を条件の基本とし、その主唱者の一人だった英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズの提議に基づいたものである。
なお戦後、IMF及びIBRD(国際復興開発銀行=WB、世銀)の起源となったブレトン・ウッズ協定の発効10年後の世界情勢は終戦当時とは大きく変わっていた。
資本主義VS組合主義
大戦の惨害を直に受け疲弊した国々は既に民間の活力と競争力で活発な復興を続け、IMFの援助レシピは、その他の第三世界の貧困な発展途上国に向けて転用され、当該各国政府の経済政策に強く介入し、夫々の国益増進の為に適用される様になった。
そして、常にある種の混乱を起すのは、IMF及び資本企業界は、正に帝国主義に利用されている道具だと決め付けて、強硬に敵対する共産主義や社会主義の国家統制主義の国々と、その後継たる大衆迎合の人民主義者達である。
そのような混迷又は矛盾は、IMFが追及する資本主義のモデル、詰り「国家資本主義」或いは現在言われる〃友好資本主義〃が目指す自由市場の促進は、大企業に特権と助成金の恩恵を与える反面、一方では協同組合(=産業組合)も含む大多数の企業は公正な自由競争の原理を歪められ、機会均等の保証さえ失い兼ねないのである。
IMFの全ての幹部要員が国際金融機関の出身者なのは単なる偶然ではない。
世界の国々の大銀行は全て反組合主義で、そして幾つかの国では産業組合の抹殺に至らしめた例がある。
それは、協同組合は共和制民主主義の非常に本質的な原理を体現する経済団体組織であるからである。
曰く、〃人〃は政治体制に先んじた基本的な存在である。なぜならばその〃人〃は政権に対し統治権を委任するものであって、即ち〃主権在民〃は揺るがせない原則なのであると。
世界的名声博すパ国組合
しかし、この原理が往々にして変質し、昨今は民主主義国家を自負する国々の中にさえそれを取り違えて、人民とその個人資産は国家の管理下にあるべきと錯誤するのである。
協同組合はその原点と現代の実状に於いて、社会細胞の構築を固める人民同士の連帯と信義の実践体制組織なのである。
現在パラグァイの協同組合は世界レベルで高い名声を博している。その組合員数は国の人口の3分の1に達し、勤勉で逞しい活発な経済勢力を構成している。
そして、事実は当の政府よりも堅実に教育、衛生、サービス業等の各分野で市民のより盛んな社会、経済面での参加を促してしているのである。
斯様に能動的な協同組合の活動が多くの〃色取りどり〃の政治家連の邪魔になり、また銀行界にとっては組合の信用事業は対抗が困難で迷惑な「靴の中の石ころ」と化し、「目の上のタン瘤」の様に睨まれているのである。
なお、IVAの適用は公正な課税、〃諸違式の是正〃をし、協同組合に益する等との色んな論証は〃子供騙し〃の言い訳に過ぎない。
筆者は、組合の信用事業や組合本来の特質以外の営利事業に限ってのみのIVA課税は賛成である。
件の組合に対するIVAの課税は来る11月1日から組合の信用部門に対して実施される。大蔵省はこれが国家財政の重要な財源になると期待している。
組合精神と言う筋金
ブラジルの「産業組合の父」と言われる故下元健吉氏は、「要するに産業組合というものは社会主義と資本主義の混血児みたいなものだ」(山本勝造氏著『ブラジルと四十八年』随想集)と言ったが、そのところに組合事業の難しさがある。
なお『産業組合に働く者はよっぽどバカか賢いか、どちらかでないと勤まるものでない』とも言った。
これは、ソロバン高い普通の企業と違い、組合には基本的に組合精神と言う筋金が一本貫いていなければ長続きしない事を意味する。
パラグァイで農牧産業の発展に大いに貢献しているメノナイト殖民は協同組合に基づいた組織だが、そこには徹底した宗教精神がある。
同じく、戦後の日系各農協も日パ移住協定の〃事業アフターケア〃の一役を担い、立派に成長しているが、一概に全てはメノナイト式には行かないとしても、組合精神を良く理解し、守り抜く事を決して忘れてはならないと思う。