「私の足腰が立たなくなっても、若い世代がこの文化を広めてくれることを願っています」。そう言うのは、日本舞踊を教える江淵カルロスさん(66、二世)だ。
1949年、サンパウロ州ツッパンのコーヒー農家に生まれた。子供時代を振り返り「日本語教育を受けさせてくれたことに感謝している」。貧しい家庭にも関わらず日本語教室に通い、輸入品である日本の子供雑誌をよく買ってもらったそうだ。
成人し銀行員をしていた江淵さんに転機が訪れたのは、96年のこと。南米銀行の駐在員として日本に渡ったのだ。以後16年間、千葉県柏市に住むことになる。
その間に日本舞踊の師匠である、藤坂流家元・藤坂光?志さんと出会い、10年間みっちり稽古を受けた。仕事を終えてから練舞場に行くのだが、到着が夜遅くなってもしっかり踊りを教えてくれた。離日時には送別会も開いてもらい、「師匠には本当にお世話になった」と江淵さんは言う。
帰国してからは一人で舞踊に励んでいたが、指導を求める人が増え、現在はパラナ州ロンドリーナ、イビポラン、パラナバイの3カ所で踊りを教えている。
ロンドリーナ本願寺で8月23日、初めて開催された日本舞踊祭りでは、74の出し物があり6時間半に及んだ。下は6歳から上は90歳まで、また非日系の参加者もあり皆が踊りを楽しんだ。
「舞踊を稽古していても、舞台に上がる機会がない愛好家もいる。発表の場を設ければ、自分も楽しく、観客の目を楽しませることができるのでは」という理由で始めたこの祭りは、今後も続けていく予定だ。
「踊りは日本の文化や歴史を学べ、健康にも良い上に高齢者でも出来る。流派、年齢、上手下手に関係なく、踊りが好きな人に楽しんでもらえる機会を増やしていきたい。衣装が無い人には、師匠から譲り受けた衣装を貸します。若い人たちがこの文化を伝えていってくれることを願っています」。江淵さんの普及活動はまだ始まったばかりだ。
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