ブラジルが誇る黒人の人気俳優夫婦ラーザロ・ラモスとタイース・アラウージョが話題の夫婦共演作を2本立て続けて演じ、話題を呼んでいる。
ラーザロもタイースも、この10年ほど、ブラジルのテレビ、映画の主演級の俳優、女優として非常におなじみの顔だ。2人の夫婦としての知名度は、グローボ局の夫婦ニュースキャスターのウィリアン・ボーネルとファッチマ・ベルナルデス、人気司会者夫婦のルシアノ・フッキとアンジェーリカに次ぐと言ってよい。
二人はまず、9月22日からグローボ局ではじまったドラマ「ミスター・ブラウ」(毎週火曜放送・全13回)で夫婦役として出演している。ラーザロが演じるのは国民的人気歌手で、タイースは名うての女性実業家。いわば、ゴシップ誌が目を付けずにはいられないタイプのスーパー・セレブ・カップルだ。
このドラマに、なんとイギリスの硬派の新聞、ガーディアン紙が注目し記事にしたことが、ブラジルで話題となっている。7日付同紙によると、白人の役者が圧倒的に多いブラジルのテレビ界において、黒人が夫婦揃って裕福な役を演じるのは画期的なことだと記している。
たしかに、この夫婦以前にブラジルで人気が出た黒人の俳優と女優の名をあげろと言われると、すんなりとはあがらないことは事実だ。
また、ガーディアンの取材に応えたブラジルの映画監督のジョエル・ジト・アラウージョ氏は「ブラジルで黒人がカップルの手本として描かれていることにも注目だ。ブラジル社会では黒人は自分たちに自信が持てず、白人との恋愛を夢見てしまいがちだ」と述べている。
このようなドラマが生まれるまでにはいかに長い偏見の歴史があったかということは、「ミスター・ブラウ」が、この夫婦が自分たちが家を貸している豪邸に夜立ち入ったら、白人の住人に泥棒と間違えられたというシーンではじまることにも象徴されている。
ラーザロとタイースは、9日からサンパウロのFAAP劇場ではじまる演劇「オ・トッポ・ダ・モンターニャ」でも共演する。ただ、こちらは夫婦役ではない。
この演劇は、アメリカで「ザ・マウンテントップ」のタイトルで上演されたもので、初演のキャストはサミュエル・L・ジャクソンにアンジェラ・バセットといった、ハリウッドの黒人俳優でも数々の賞を受賞した名優だ。
ストーリーは、アメリカでの公民権運動の英雄マーティン・ルーサー・キング牧師が、1968年4月4日にメンフィスのモーテルで暗殺される1日を描いたものだ。ラーザロが演じるのはもちろんキング牧師で、タイースは、キング氏が最後の日を過ごしたモーテルのメイド、カマエ役だ。
この役に当初、ラーザロとタイースは戸惑って気乗りしなかったという。周囲からは「ラーザロこそ、この役をやるべきだ」と強く勧められたが、アメリカの、しかも黒人の歴史そのものを変えた重要な人物の役柄に荷の重さを感じたためだ。
だが、自分を熱心に追いかけてきた脚本家の熱意と、読んで笑い、涙さえした脚本にほだされ、2人は出演を決めたという。ただ、「ミスター・ブラウ」の収録が決まっていたので、時期が今までずれこんでいたという。
ドラマは放送延期がなければ12月15日まで、演劇は12月13日まで上演される。(7日付エスタード紙などより)