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ソカロ(中央広場)から見た街角。ビルの合間からラテンアメリカタワーが見える
ソカロ(中央広場)から見た街角。ビルの合間からラテンアメリカタワーが見える

第44回ふるさと巡り=メキシコ、交流と歴史の旅~榎本殖民地を訪ねて~=(1)=いざ、メキシコ(墨西哥へ)!=タコスとビールに酔う初日

 9月24日~10月1日の日程で『県連第44回ふるさと巡り』(本橋幹久団長、参加者数90)でメキシコを訪れた。世界で唯一、日本人学校と現地校が融合した「日本メキシコ学院」、首都メキシコシティや古都クエルナバカを観光、そして今回の目玉、ラテンアメリカ最初の日本人殖民事業の舞台となった「榎本殖民地」をグァテマラ国境に近いチアパス州に訪ねた。各地で日系団体と交流、歴史にも触れる旅となった。

ビールとタコスで気持ちをメキシコに切り替える

ビールとタコスで気持ちをメキシコに切り替える

 記者が所属したのは第3グループの16人。出発は9月24日の午前6時出発のリマ経由便。午後8時(ブラジル時間午後10時)に到着した。飛行時間16時間といういきなりの強行軍…。とはいえ、同じグループのみなさんは、シャキッとしているので背筋を正し、メキシコ初の食事を楽しもうとホテルの食堂へ。
 離乳食によさそうなトマトスープの後、魚が出されたのだが、ナイフを入れた瞬間、強烈な磯の香りが鼻腔をくすぐった。早々にナプキンで口を拭き、外気で深呼吸。気を取り直して、同じブロックにあるタコス屋に向かう。やはり、到着直後はその国の味覚に浸りたいではないか。記者の帰国時の習いは、成田エキスプレスで、安堵感と鯖寿司をつまみに、日本酒を飲ることなのだ。
 久々に訪れたメキシコ楽しみの一つはビール。『ビール大全』(2011年、文春新書)によれば、生産国順でいくと、アメリカ、中国、ドイツに次ぐのがブラジルで、日本をはさんでメキシコは6位なのである。なんとも縁のあるこの順位。3国の友好を願う意味でも、飲まねばなるまい。
 ライムと塩を絞るスタイルの軽いラガーであるコロナやXXが有名だが、やはり、ミュンヘンのビールコンテストで1位になったこともある「ボヘミア」を注文するのが正解だろう。
 日本でいえばエビス、ブラジルでセーラ・マルテといったところか。やはり、最初の一杯はこれでなければ締まらないし始まらない。早速、太目のセニョリータにビシっと注文すると、すぐさま、「No hay!(ないわよ)」と言われ、ずっこけた。
 しょうがない…これも悪くない「モデーロ」を飲みながら、タコスを待っていたと、目の前に座っているドン・ガバチョ! といった感じのセニョール二人が、たっぷり蓄えた口ひげをむしり取らんばかりの激しい接吻を始めたので驚く。
 よく見ると、店の前のタバコ売りと話し込んでいるウェイターも他の席の客もそちら系。思わず椅子に深く座り直した。お世話になるホテル前は同好のカップルで賑わういわゆるハッテン場通りとして有名なのだ。さきほどのセニョリータも、実はセニョリートだったかも知れない。
 果てしなく続く愛の前哨戦を見ながらでも、タコスはやはり美味しかったが、変な緊張感でぐったりと疲労感を覚えたので、早々にベッドにもぐりこんだ。
 翌朝、朝食に降りると炒り卵やメキシコ風ソーセージに加え、焼き飯がある。メキシコといえば、トルティージャ(トウモロコシや小麦粉で焼いたパン)かと思っていた。ガルソンを呼び、「メキシコでも朝食に米を食べるのか?」と聞いてみると、首を振るので、「では我々への歓迎の意味か?」と聞くと、困った顔をしている。
 どうでもいいことだが仕事柄、裏は取らねばなるまい。他のガルソネッテに同じ質問をすると「もちろん! 食べますよ」と自信満々の返答。 これだけ遠く離れても同じラテンの国にいるんだなあ~と、昨晩の疲れも忘れ、じんわり嬉しくなった。(堀江剛史記者)