サンパウロやパラナの内陸でサトウキビ畑を眺めていると、「昔は全部コーヒー畑だったんですよ」と地元の人に聞いたりする。トメアスーのピメンタ畑も今は昔。病気や相場があるから、農業は難しい。かつて紅茶で栄えたレジストロもそうだ。わずかに残る紅茶畑で、「ここから眺める夕日が最高なんです」と語ったある二世の言葉が忘れられない。〃紅茶の都〃と言われただけに、思いは強い▼5歳から茶畑に立つ島田梅さん(88、二世)が、手摘みで製茶する銘柄「おばあ茶ん」を昨年、立ち上げた。輸出用茶葉の納品先から出荷を断られたさい、「茶畑をアブラッソ(抱擁)して泣いた」が一念発起した。お茶、地元への愛は誰よりも強い。そんな梅さんが明日25日、愛知県尾張旭市で行われる『第4回紅茶フェスティバル』に参加する(22日付け)▼すでに大会関係者は「おばあ茶ん」を試飲している。「すっきりとしながらもふくよかな味わいを持ち薫り高い。世界に通用する品質」と高評価。同フェスには日本中から紅茶の専門家が集まる。NHKや名古屋テレビの取材も決まっており、トークショーも予定されているようだ。訪日直前、本紙編集部に立ち寄り、「もう頑張るしかないです!」と表情を引き締めた梅さん。このPRが実り、何かのチャンスに繋がってほしい▼ブラジルといえばコーヒーだが、紅茶もあり、その歴史にはレジストロの日本人が関わったこと。そんな史実も日本のより多くの人に知ってほしいと思う。米寿を迎え、レジストロの意地を背負って立った梅ばあちゃんの活躍にコロニアからも声援を送りたい。(剛)