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ゼー・ド・カイションの記念祭=ブラジル映画界のホラーの異端児

 ブラジル映画界名物の異端児、ホラー映画監督の「ゼー・ド・カイション(棺桶のゼー)」ことジョゼ・モジカ・マリンズの名作の記念上映と展示会が行われる。
 「ゼー・ド・カイション」といえば、ブラジルの60~70年代を代表するホラー映画の中の吸血鬼のキャラクターだ。そのゼーの主演映画を監督するのは、ゼーを演じるモジカ自身だ。
 現在、開催中のサンパウロ国際映画祭では、彼の代表作である「ア・メイア・ノイテ・レヴァレイ・スア・アルマ(真夜中に、お前のたましいを奪ってやる)」(64年)、「エスタ・ノイテエンカルナレイ・ノ・テウ・カダヴェール(今夜、お前の死体に入り込む)」(67年)、「エンカルナソン・ド・デモーニオ(悪魔の憑依)(08年)」が上映される。
 さらに、ケーブルテレビ局「スペース」のオリジナル・ドラマとして制作されたゼーの伝記ドラマ「セリエ・ゼー・ド・カイション」も、全3作中2作が同映画祭で上映される。
 さらにサンパウロ映像博物館(MIS)では、ハロウィンにあたる31日から来年の1月10日まで、「棺桶のゼー」の展示会を行う。これはゼーのトレードマークである黒のマントやシルクハット、撮影に使ったカメラのレンズ、過去の映画のポスター、さらに、ゼーの代名詞でもある長い爪の手を象った彫像まで置かれている。
 もっともMIS側の意向としては、これは「ミニ展示会」に過ぎないという。MISとしては、17年にゼーのこれまでの生涯を描いた大展示会を行い、同年の同博物館の目玉にしたいと考えている。これも、「棺桶のゼー」がいかに社会的に根強く愛されているキャラクターであるかを示す一例だ。
 現在79歳のゼーは近年も、「リズ・ヴァンプ(吸血鬼リズ)」の愛称で女優やテレビの司会をつとめている娘のリズ・マリンズと共に公の場に登場することが多かったが、昨年、心停止2度の大病を患い、現在は静養中のため、表に姿を現さなくなっている。
 28日付フォーリャ紙は、2度の心停止のことを「昨年、ゼーは2度死んだ」と表現し、映画内キャラクターにあわせたユーモアと共に今回久々に取材を受けたゼーを紹介している。ゼー本人は「私が死んでも、人々は〃棺桶のゼー〃のことを本人以上に語り続けるだろう」としつつ、「もう〃棺桶のゼー〃と呼ばれたくない」「奴が死んでくれればいいんだが」と語っている。(28日付フォーリャ紙などより)