『戦後70年―日本の歩みと海外日系人』をテーマにし、第56回海外日系人大会(海外日系人協会主催)が、10月28日から東京で3日間行われ、17カ国から約160人が集まった。2日目の分科会では「重国籍の容認」や「在外選挙制度の簡素化や電子投票の導入」などを訴える7項目の大会宣言を採択した。今回は大会開催の端緒となった終戦直後の「ララ物資」に改めて焦点が当てられた。
1日目には憲政会館で「戦後70年」をテーマにした3人の講師による講演会がまず行われ、続いて高円宮妃殿下ご出席の歓迎交流会が開催され、海外日系人と30分ほどご歓談された。
2日目の代表者会議で海外日系人協会の田中克之理事長は「この大会自体が『海外日系人は大切な資産』という日本側の意識の表れ」と挨拶し、来賓の外務省領事局の飯田慎一政策課長は「ウソをつかない外交をやってきたから現在のようにアジア、中南米諸国から信頼を得ている。特に日系人がいる国においては彼らの存在が信頼感を醸成している」とのべた。
ララ救援物資の専門家、津田塾大学の飯野正子名誉教授は、1946年から6年間にわたり、当時の邦貨にして400億円分の物資や資金が、北南米から送られたことを説明した。「全体の20%、80億円分は日系人が送ったもの」。これを感謝するために57年、第1回海外日系人大会が開催され現在まで続いている。
日系救援組織は全部で36団体あり、大半が米国やカナダやハワイ。ブラジルからは「ブラジル赤十字公認日本戦災同胞救済会」「沖縄救済会」などが入っている。
午後は3つの分科会に分かれて討論し、それを持ち寄った7項目の大会宣言(後日全文掲載)が採択された。
(1)戦後70年の経験を踏まえ、より一層日本との架け橋となると同時に、海外日系人が戦後培った遺産の継承に務めます。(2)日本文化、日本語の継承・発信に努める日系団体の活動に理解と支援を望みます。(3)日本企業の海外進出増勢に当り経営の現地化とともに、重要なパートナーとして日系社会との連携を期待します。(4)日系ユースは戦後70年の歴史から学び、新たな国際秩序の創造に貢献します。(5)日系社会の高齢化に対する認識と感心を高める必要性を訴えます。(6)重国籍を認めるよう日本政府に求めます。(7)在外選挙権制度の簡素化を提案します。
29日夜には飯倉公館で外務大臣主催レセプションが行われ、岸田文雄外務大臣は「お迎えできて大変嬉しく思います」と歓迎し、「お住まいの国とわが国との友好関係は、長年にわたって大変なご苦労をされている皆さんのおかげ」と称えた。