「行くときや帰ってきてすぐは出入りするけど後はサッパリだよ」。ある万年県人会長が嫌味タップリに話していた。県費留学・研修生が県人会活動に参加しないことを非難しているのだが、「彼らが集まるような取り組みをするのが会長の務めでは」と心の中で皮肉ったものだ。しかし、ほとんどの会は同じ状況だろう。制度が打ち切られ、「県人会のメリットはもうないね」と言い切る関係者までいる▼ある県人会の周年事業で慶祝団が訪問した。知事とOBとの懇談を傍聴した。もともと内気なのか日本語で話さなければと思ったのか、OBらの発言はほぼなく、知事の方から「…時間もあるので何かないですか?」と促すほど。こんな状態で制度の有益性を見出し、復活させようと思うわけがない。二、三世の県人会長のほとんどがOB。これからどうなるのかなと思ったりもする▼そんななか、鳥取県人会の新たな動きに感じ入った。OBらが基金をつくり、母県の若者をブラジルに呼ぶ「母県若人招へい事業」を始めるという(13日付け特集)。もはや県に経済的な面を含め頼りきるような時代ではない。「相互にメリットのある関係づくり」が必要と思っていた。体質を変えるような芽生えを歓迎したい▼第1期の田中勝子さんは石破二朗知事(当時)来伯時に直談判した。個人での初訪日時に「県費留学の開始」を電報で知らされ、翌年の第1期生となった。「日本を知りたい」という自発的な動きが制度を生んで半世紀。ちなみに石破知事は、地方創生担当大臣の石破茂氏の父。〃48県目〃の地方創生に関係があるとは、なんとも感慨深い。(剛)