ミナス・ジェライス州マリアナ市のサマルコ社鉱山で5日に起きた鉱滓ダム決壊事故で、大量の汚泥や瓦礫などが流れ込んだドッセ川とその支流のグアラッショ・ド・ノルテ川は、魚や藻などの動植物が壊滅状態となっており、回復不能との見方が広がっている。
「今回の事故は大惨事で、その損失は図り知れない。修復は不可能だ」と言うのは大西洋岸森林地帯(マッタ・アトランチコ)の生態系を調査するベアトリス・ミサジア氏だ。同氏によれば、川に流れ込んだ泥は生態系全体をコンクリートで固めた状態にしてしまい、これらの流域にしか生息しない動植物を壊滅させた可能性があるという。
ミナス・ジェライス連邦大学のマルクス・ヴィニシウス・ポリグナノ教授も、「流域に生息する動植物の損失は甚大で、エコシステムに生じた損害は修復不能」「二つの川が元の姿に戻る事はない」と見ている。
国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)は、ドッセ川支流のグアラッショ・ド・ノルテ川に流入した鉱滓は、オリンピック用のプール2万個を満杯に出来る、5千万立方メートルと推定している。鉱石の滓や鉱山廃水が押し流した木材や土砂、瓦礫は同川に流れ込んだ後、ドッセ川に流入。大量の汚泥などを含んだ水は、ミナス・ジェライス州とエスピリトサント州を経て、大西洋まで至るはずだ。
鉄やマンガン等を含む大量の汚泥や瓦礫は川本来の流れを変え、泥などで埋まっていない場所に流れ込むなど、川の形態そのものを変えてしまう可能性もある。
ミサジア氏によれば、従来なら下流に向う川の流れが、勢いを失い、無数の池や湖に変わってしまう可能性もある上、泥流が持ち込んだ農薬や生活排水などで藻やバクテリアが大量発生すれば、湖は緑のカーペットで覆われ、水中での光合成が不可能になるという。
鉱滓に含まれる大量の鉄分はそれだけで水中の酸素を急激に減少させ、水のPH濃度も変えてしまうが、光合成が行われなくなれば、水中の酸素の供給が途絶えて、魚や植物、バクテリアさえ生き残れなくなる。
おまけに泥は水に溶けない。川に流れ込んだ大量の泥は、ショベルカーなどでかき出す以外、除去する方法はない。
大量の瓦礫やなぎ倒された樹木などと共に、水面に浮かぶ大量の魚。事故直後は、死んだ魚や断末魔の苦しみの中にいる動物に涙した写真家の話などがネット上に流れたが、現在は魚などの腐臭が町中に流れる。
少しでも酸素がある所を探して土手に跳ね上がり、岩の中に頭を突っ込んだ魚、水の中から出てきたカエルなどは、何とか生き延びようとした動物達の最後の足掻きを示している。
ジウマ大統領が現地を視察した直後にIbamaがサマルコ社に科した罰金は2億5千万レアルだが、人間や動植物の死や健康被害、失われた川といった諸々の影響を考えた時、焼け石に水としかいえない額である事は明白だ。
ドッセ川に流れ込んだ泥は18日未明、エスピリトサント州コラチーナ市に届いたという。(13日付UOLサイトなどより)
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