エドゥアルド・クーニャ下院議長(民主運動党・PMDB)の下で、大統領が拒否権を行使した法案の再審議が行われる中、代表的な「爆弾法案」二つに対する拒否権維持が決まり、連邦政府に有利に働いた。だが、いずれも薄氷の勝利で、ジウマ政権下の連立与党の関係が脆弱なことを伺わせていると、19日付伯字紙が報じている。
「爆弾法案」とは、そのまま承認すれば国庫負担が爆発的に増え、政府の財政支出切りつめが困難になるような法案で、大統領は裁可の際に拒否権を行使していた。
下院では17、18日に大統領が拒否権を行使した法案14件の再審議を行ったが、その中に含まれる「爆弾法案」二つは大統領拒否権の発動を逆転させられず、連邦政府側の勝利となった。
その一つは、連邦裁判所職員の給与を2019年までに現状の59・5%増とするもので、もう一つは、最低賃金の調整方法を国立社会保険院(INSS)の対象下にある退職者全員に適用するという法案だ。両法案への拒否権行使が否決され、議会が決めた通り発効となれば、国庫負担は前者で360億レ、後者で92億レの計452億レ増えるはずだった。
だが、政府側勝利とはいえ、投票結果は薄氷を踏むようなものだった。「拒否権発動に反対」した票は、拒否権行使を無効化させるのに必要な257票に届かなかったものの、前者で251票、後者で211票と、相当数の反対票が投じられたからだ。
その内訳を見ると、反対票を投じた議員は連立与党内にもかなりいた。所属議員の半数以上が両法案共に「大統領拒否権発動に賛成」したのは、労働者党(PT)とブラジル共産党(PCdoB)の2党のみだった。
テメル副大統領や上下両院議長が所属し、議会最大勢力のPMDBは3~4割程度の賛成に終わり、進歩党(PP)、社会民主党(PSD)、民主労働党(PDT)、ブラジル労働党(PTB)はそれを下回った。ブラジル共和党(PRB)に至っては、野党並みのごく少数の賛成に終わっている。
今年に入って検察庁が提出したラヴァ・ジャット作戦での疑惑の政治家リストに名前が挙がる前から「反政府派」として知られていたクーニャ氏が、リスト入りや自身への告発は連邦政府の陰謀と解釈した影響もあり、連邦政府はこのところ、議会で敗れ続けていた。そこを勝利したことで、連邦政府が財政建て直しを行いやすくなる良い兆候を見る声もある。
だが、エスタード紙によると、上院側はこの結果を「政府と下院の関係は依然としてうまく行っていない」と解釈しており、今後も注意が必要だと見ているという。
両日中に審議された14法案中、12法案は拒否権が維持された。