南米ツアーでブラジルを訪れていたアメリカの大物ロックバンド、パール・ジャムが、11月のブラジルを連日にぎわせている災害スキャンダルに関し、コンサート中に厳しい批判を行い、話題を呼んだ。
20日、ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテのミネイロン・スタジアムで公演を行ったパール・ジャムは、22曲目の「サイレンズ」の前のMCで、ヴォーカリストのエディ・ヴェダーがメモを取り出し、ポルトガル語でスピーチした。
それは、今月5日にミナス・ジェライス州のサマルコ鉱山で起きた、不要な鉱物を堆積させる鉱滓(こうさい)ダム決壊についてだった。ダム決壊であふれ出た堆積物と泥流は、同州マリアナ市に流れ込んで家屋を流し、多くの人命を奪い、家畜などの被害を出したのみならず、後年まで続きうる深刻な公害まで残した。
同鉱山からの堆積物と排水はドッセ川に流入、水の色を褐色にしながら大西洋まで流れ込み、魚をはじめとした川や海の生態系にも甚大な被害を及ぼしている。堆積物の海への流入は23日も続き、改善にはほど遠い状況だ。
エディはスピーチで「大企業が、ただ金儲けのために、環境を考えることを一切せず、土地を悪用したのは大問題だ。今回の事故は多くの人の命を奪い、川も汚染したが、それでも企業は収益をあげ続ける。僕たちはこれらの企業が、自分たちが引き起こした悲しい大災害のことを二度と忘れることがないくらい、厳しく処罰されることを願っている」と言い切り、鉱山の所有企業であるサマルコや、親会社のValeその他の大手企業を痛烈に批判した。
今回の鉱滓ダム決壊事件はブラジルでは非常に大きなニュースとなっているが、国際的にはそれほど大きく取り扱われていなかったため、世界的バンドである彼らの発言は問題意識を世界に広めるのに意義があった。
公演の第2部では、13日に起きたパリでのテロ事件の犠牲者哀悼のため、ジョン・レノンのイマジンが流れる中、観客に携帯電話の明かりを点すよう要請した。その後には、観客90人が殺された劇場「レ・バラクラン」で演奏中だったロックバンド、イーグルス・オブ・デスメタルに敬意を表し、彼らの代表曲「ウォント・ユー・ソー・ハード」のカバーも披露した。
1991年にデビューしたパール・ジャムは、アメリカに息づく社会問題や狂気に真摯に向かい合う歌詞で90年代にカリスマ的人気を博した。その存在は「世代の代弁者」と呼ばれ、現在もその人気は根強い。特に南米では圧倒的だ。ブラジルでの公演は5年間で3度目で、毎回、アリーナ会場でチケット完売の人気を誇っている。(21日付UAIサイトより)