ホーム | 日系社会ニュース | 五輪まで1万部販売目指す=柔道銅メダリスト 石井さんの著書ポ語に=弟子ら翻訳出版に全面協力
来場者と記念撮影に納まる石井さん(左)。右端は馬欠場さん
来場者と記念撮影に納まる石井さん(左)。右端は馬欠場さん

五輪まで1万部販売目指す=柔道銅メダリスト 石井さんの著書ポ語に=弟子ら翻訳出版に全面協力

 1972年ミュンヘン五輪でブラジル柔道界に初のメダルをもたらした石井千秋さん(74、栃木)が執筆し、当地柔道界の功労者群像を描いた書籍『ブラジル柔道のパイオニア』がこの度、弟子らの協力によってポ語版『Os Pioneiros do Judo no Brasil』として刊行された。サンパウロ市ショッピング・パチオ・パウリスタのサライバ書店で11月26日夜、刊行記念会が行なわれ、200人近い関係者やファンが駆けつけ、石井さんは忙しそうにサインに応じていた。

 昨年4月に発刊した日語版は石井さんの一番弟子、サンパウロ州バストスの馬欠場卯一郎さんが、地方指導の際に各地へ届けるも「ポ語で読みたい」との希望が相次いだ。石井さん自身もポ語版の必要性を感じていたが、出版費用に頭を悩ませていた。
 それでも1年ほど前から馬欠場さんの妻ら3、4人がボランティアで翻訳作業を始めたのを見て、食品・飲料メーカー社長を務めるロドリゴ・モッタさん(46)が費用支援を表明した。
 石井さんの弟子で、6段を所有する柔道家のロドリゴさんは「自著出版の経験もあったし、柔道強化のためにもポ語版が必要だと感じた」と賛同した理由を語る。
 刊行記念会には、92年バルセロナ五輪金メダリストのロジェリオ・サンパイオさんや現役選手、講道館有段者会の関根隆範会長、早稲田大学OBによるブラジル稲門会などから多くの関係者が訪れた。
 パウリスタ柔道連盟のアレサンドロ・パニッツ・プグリア会長も購入に訪れ、「石井さん以前の偉大な指導者たちについて知ることは重要。柔道の歴史を子どもらに知ってもらうためにも、全伯各地で活用すべき。五輪応援にもつながる」と期待を込めた。
 市内の道場に通うマルコス・フローラさん(31)は、「この本にはブラジルにおける柔道普及の原点が記されている。柔道家にとって石井先生は生きる伝説だ」と話した。五輪柔道では合計19個(金3、銀3、銅13)のメダルを獲得しているが、その先駆者の著書とあって購入者が相次いだ。当日だけで178冊売れたという。
 石井さんは閉店する午後10時までサインに応じ、「店じまいまで並んでくれるなんて予想以上の反響。ロドリゴは古い生徒で『全て私に任せて下さい』という言葉をもらい、一生懸命になってくれた」と感謝した。
 その他、ブラジル柔道映画『グランデ・ビットリア』の原作者で、馬欠場さん教え子マックス・トロンビーニさんなどの働きかけにより、全伯展開するサライバ書店で販売中。一冊49・90レアル。ロドリゴさんは「印刷した1500部はクリスマスまでに完売したい。五輪までに1万部まで部数を伸ばしたい」との希望を語った。


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 五輪柔道の銅メダリスト石井千秋さんによる著書が、ポ語版『Os Pioneiros do Judo no Brasil』として刊行された。先月26日の刊行記念会に続き、1日には生徒の道場でもサイン会を行なって75冊ほど売れたという。リオ五輪を来年に控えるという時期も手伝ってか、この勢いなら来年8月までに1万冊販売は夢ではないかも。なお日語版『ブラジル柔道のパイオニア』は本紙(11・3340・6060)でも取り扱い中。