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ビジネスコラム=PwCブラジル=第4回=ICMS変更の留意点=矢野クラウジオ(タックス・ディレクター)

ICMS(商品流通サービス税)非納税義務となる最終消費者に関する州間取引の2016年1月以降の変更について

憲法補足法87/2015に関する連邦議会のページ

憲法補足法87/2015に関する連邦議会のページ


 現在、他州に所在するICMS非納税義務となる最終消費者との取引は、ICMS全額が売り手側の州によって州内税率をもとに徴収されています。
 ICMSを徴収する売り手側の州のみベネフィットを得るという歪んだ状況となっています。
 電子商取引(イーコマース)でよくある例ですが、例えば、ペルナンブコ州レシフェで個人消費者がインターネットを通じてサンパウロ州のウェブ店舗の商品を購入した場合、その取引全てにかかるICMSが州内税率(18%)に基づいてサンパウロ州で徴収されることになります。
 仮に、同じ取引がレシフェの実際の店舗でサンパウロで製造された商品を対象に行われた場合、ICMSは(北東部の州間税率7%)サンパウロ州で納税され、レシフェの実際の店舗は、個人消費者との販売取引により、最終消費者への販売からペルナンブコ州税率(17%)のICMSを徴収し、商品購入時に支払ったICMS(7%)を回収することになります。
 この状況が、最近の憲法補足法87/2015の承認により変更されます。
 2016年1月以降、これらの取引(ICMS非納税義務となる最終消費者との州間販売)では、売手は州間税率に基づきICMSを販売元の州へ納税を行い(州内税率ではない)、その上で、販売先の州へのICMS(州間税率と販売先州内税率との差)の納税義務も負うことになります。
 上記の例によると、例えばサンパウロ州から(ウェブで販売している商品会社)レシフェの個人消費者に商品を販売したとします。サンパウロ州で納税されるICMSは7%(北及び北東部の州は州間税率は7%、他の州間税率は12%)となり、売り手はさらに、ペルナンブコ州へもICMS10%を州内税率に基づき納税することになります(州間税率とペルナンブコ州内税率(17%)の差)。
 重要な点は、販売先の州へのICMSの納税は今後数年間にわたり(州間税率と販売先州内税率の差を年20%納税)、販売先の州に納税されることになっている点です。
 当該変更は、電子商取引(イーコマース)にかかるICMS非納税義務となる最終消費者に対する全ての州間取引の歪みを是正することを目的としたものですが、その他の商取引、すなわち電子商取引を用いない政府機関、金融機関、病院、レンターカー会社やサービス・プロバイダーなど(州によっては建設会社もサービス・プロバイダーと考えられる)との取引も適用対象となります。
 今後、各州の税務当局によって明確にされるべき点が多数ありますが、この変更は、販売元の会社が販売先の州のICMSに対する納税義務を負うため、現状に加えてさらに、管理の強化が求められることになるでしょう。販売先の州にかかる各製品に適用されるICMS税率に関する情報の入手は容易でない場合もあります。ブラジルには、26州及び連邦区があるため、混乱が生じる可能性が予想されます。
 注記―10月の寄稿記事である暫定措置685号(PM685)「重要な取引にかかる情報の申告(DIOR – Declaracao de Informacao de Operacoes Relevantes)」は、国会の審議により、最終版からは廃案となりました。
(問い合わせclaudio.yano@br.pwc.com ※この記事は、ブラジルにおける法令等の改正動向等をお知らせするため発行されたものであり、一般情報の提供を主たる目的としていますので、個別ケースに対する専門的アドバイスとして、ご利用頂けない場合がございますのであらかじめご了承下さい)