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舞台のワンシーン(楠野裕司さん提供)
舞台のワンシーン(楠野裕司さん提供)

寺山修司の代表作上演=演劇実験室「万有引力」

 1978年の初上演以降、海外でも高い評価を得た寺山修司氏の代表作「奴婢訓」が、劇団「演劇実験室◎万有引力」(東京)により、11月13日の弓場劇場を始めとしてサントス2回、サンパウロ市ピニェイロス2回の計5回上演され、好評のうちに幕を閉じた。
 舞台は東北の寒村にある大きな洋館。なぜか主人不在となった館で、召使たちが束の間の主人を演じる「主人ごっこ」に没頭する。
 顔を白く塗った召使、弦楽器を半分に割った帽子や、人間がすっぽり入るほど巨大な靴。口から飛び出した大きな入れ歯、2人の男を水平に吊るす器具、奇妙な拷問機。
 時折真っ赤な照明が舞台を照らし、主人の不在によって引き起こされた狂気を、より鮮明に浮かび上がらせる。絶対的なリーダーを失った現代の混乱を、象徴的に描いているようでもある。
 初めて寺山作品を観覧したという神戸保さん(51、愛知)は、「舞台セット、メイク、俳優の動きなど、いろんな面で完成度が高い作品。グロい部分もあり、早く覚めて欲しい夢のような世界観だが、怖い中にもコミカルな場面があって面白かった。寺山修司さんのことをもっと知りたくなった」と感想を語った。