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パルメイラス練習場で笑顔を見せるラファエル・マルケス
パルメイラス練習場で笑顔を見せるラファエル・マルケス

ラファエル・マルケス、日本の思い出を語る=元大宮アルディージャのFW=今年は名門パルメイラスで15得点の活躍

 Jリーグ、大宮アルディージャに2009年8月から12年の半ばまで所属、FWとして97試合出場29得点と活躍したラファエル・マルケス。その後ブラジルのボタフォーゴ、中国の河南建業に所属、15年はパルメイラスの一員として活躍し、公式戦15得点でチーム2位。コリンチャンス、サンパウロFCと、ライバル相手にも2得点の活躍を見せた彼を、サンパウロ市西部の同チーム練習場に訪ねた。

Q 3年過ごした日本の印象を聞かせてください。
 なによりとても懐かしい。恋しく思っている。サッカーにおいても人生においても。日本に着いたばかりの頃、何事もとっても几帳面で、少し戸惑った。自分は、物事をおおらかに考えるブラジル人だから、文化の違いに戸惑った。でも日本で3年生活したらそっちの方に慣れてしまって、今は几帳面さが懐かしい。私も妻も娘も日本の真面目な考え方になれて、ブラジルが何かにつけてリラックスしすぎに思える。「日本ではこうだよ、もっと物事すべてにおいて几帳面だよ」と周りに伝えようともしている。

Q 日本の私生活で思い出に残っているのは?
 食べ物はうどん、ラーメンが大好物だった。埼玉に住んでいたから東京にはよく行った。渋谷がお気に入り。時々ファンに気づかれたけど、そんな時も日本人は礼儀正しく接してくれた。みんなモジモジ、申し訳なさそうに近づいてきて、ブラジルとあまりに違って驚いた。

Q 遠征で日本中行ったと思いますが、お気に入りの街は?
 強いて言えば大阪がお気に入りだけど、優劣付けにくい。遠征の時は毎回、当時のチームメイトでポルトガル語が話せるGKの北野と街に繰り出して、名物料理を食べた。また、どこにいってもうどんやラーメンはあるからそれも食べた。

Q 2011年には〃3・11〃東日本大震災も経験しています。「もう帰りたい、これではプレー出来ない」とは思いませんでしたか?
 開幕戦が終わったばかりの頃だった。妻と娘は3月18日に日本に来る予定だった。放射能の心配もあったし、18日に来てもらうのは止めた。Jリーグも1カ月半くらい休止になった。外食頼りだったけど、レストランも閉まる、車のガソリンも入れられないから本当に困って、一旦ブラジルに帰って、状況が落ち着くのを待つ事にした。ブラジルで心配している家族に元気な姿を見せる理由もあって、15日ほど滞在して戻ってきた。ブラジルでは日本のことがものすごく大げさに報道されていたから、周りはみんな心配したけれど、心配いらないと説明した。日本社会はブラジルと全く違う。復旧も早いはずだって確信していたから。半年で社会インフラもほとんど回復したよね。そのシーズンは仙台にも行ってプレーしたし、何も問題なかった。

Q 所属した大宮アルディージャは、浦和レッズというライバルチームがありました。当時のライバル関係について語っていただけますか?
 僕はトルコやブラジルでのライバル関係を経験しているから、正直そんなに厳しいライバル関係を日本で感じた事はない。当時の浦和レッズのブラジル人選手のポンテ、エジミウソンなんかとは休みが合えば一緒に食事をする事もあった。チームは違っても同じ母国を離れて戦うサッカー選手として連帯感があった。日本のサポーターも、試合の時は熱く応援するけれど、試合が終われば気持ちの切り替えも早い。スタジアムでチームのユニホームも脱いじゃうしね(笑)

Q 日本はW杯などで負けると「日本人は選手に優しすぎるからいけない。勝っても負けてもノープレッシャー。それに引き換えブラジルは負けたときのプレッシャーは尋常じゃない。もっと選手に厳しくあるべき」と言う意見が出ますが、どうお考えですか。
 何事にも限度があるんじゃないかな。勝っても負けても同じで、ファンからもメディアからもノープレッシャーだったら、それは良くない。ただ、それがここで時々起こるように暴力になったらよくないよね。選手にとってサッカーが仕事なように、ファンにだって仕事があって、そこでミスする事だってありえるよね。日本にいた時は確かに外国人選手同士で、「日本は負けても拍手でちょっと変わっているよね。日本人選手は負けてもリラックスしすぎだよね」と話したことはある。もしもうちょっとプレッシャーがかかって、それに負けまいと普段のリーグ戦から日本の選手が戦って、精神的に強くなれば、日本が強くなる助けになると思う。

Q Jリーグで「敵ながら天晴れ!厄介だな」と思った選手は?
 ガンバ大阪の遠藤保仁。日本のサッカーはパスをつないで攻めるスタイルのチームが多いけど、特にガンバは常に、勝っていても負けていても同じようにパスを丁寧につないで攻めていた。遠藤はその中心選手として、いつも冷静だった。

Q 元所属チーム大宮アルディージャは昨年降格しましたが、今年はJ2で好調で、J1昇格をほぼ手中に収めています(その後J2で優勝し、J1昇格確定)が、その様子は知っていましたか。
 もちろん知っている。2012年半ばに大宮を離れた時からずっと、大宮の結果は追っている。日本が大好きだし、大宮にも愛着がある。友人もいるし、いつか戻れたらなあって本当に願っている。

Q 今は中国の河南建業からのレンタル移籍でパルメイラスにいます。このレンタル期間はいつまでですか?
 今年いっぱい。

Q 河南建業との契約はいつまで?
 来年いっぱい

Q 来年は中国に戻るのですか
 できればそれはしたくない。僕はプロサッカー選手としてブラジル、トルコ、日本にいたけれど、いつも高いプロ意識を持ってやってきた、日本の経験で「真面目さ」にも拍車がかかった。けど、中国のチームではそれを保つのが難しい。所属チームのプロ意識はまだまだ低い。あそこは日本と地理的に近いけれど、文化はぜんぜん違う。もしかして日本に住んでしまったから、あの国の混沌とした状況にショックが強いのかも知れない。正直に言うと中国に着いた初日に「ここには居たくない。お金の問題じゃない」と思ったほど。今はパルメイラスの一員として本当に満足している。「ここに残りたい」って公言している。チームもメディアもみんな僕の意思は知っている。でも、もしそれがかなわなかったら、Jリーグがいいな。

 インタビュー時(10月30日)、パルメイラスはブラジル杯決勝進出を決めていたが、その後決勝でサントスFCをPKの末に破って優勝。来年のリベルタドーレス杯進出を決めていた。
 ラファエル・マルケスの契約問題は当地でも話題になっており、オフシーズンに入ってからもほぼ毎日、そのニュースは新聞紙上をにぎわせている。
 最大の焦点は1年契約が残っている中国の河南建業が要求している150万ドルとも言われる違約金を、パルメイラスが払えるかどうかに絞られる。
 河南建業側も放出に傾いており、違約金の減額、もしくはもう1年のレンタル延長を目指して交渉が続けられている。(規)