「なんとか無事に到着しました」。日伯外交120周年を記念し、世界平和の願いを象徴する〃ナガサキ誓いの灯〃が9日朝、〃分灯の使者〃3人によって当地に運ばれ、午後にサンパウロ市内のブルーツリーホテルで「種火到着報告会」と記者会見が行われた。この事業を主宰する「ブラジル・日本平和の絆交流会」の中嶋年張代表は、そう胸をなでおろしながら「灯」の入ったランタンに視線をやった。
式典ではまず、中嶋代表が運搬方法を説明した。長崎の平和公園の〃誓いの火〃から三日がかりで、温度差を利用して蓄電する装置を使って乾電池に電気エネルギーとして移し替え、当地に来てからガムの包み紙を細長く切って電池の両端に繋げて発火させて〃火〃に戻した。梅田邦夫大使や田上富久長崎市長のメッセージも披露され、式典に出席した中前在聖総領事も「日本の平和に関する誓いが、ブラジルに伝わることを非常に嬉しく思います」と祝辞をのべた。
記者会見には日本メディアの特派員も詰めかけ、次々に質問が飛んだ。〃誓いの灯〃をどう活用するのかとの質問に、ラーモス移住地が所在するフレイ・ロジェリロ市の岩崎秀樹副市長は「、州政府にも働きかけ、灯をともし続けることで、子どもや市民への平和学習をさらに拡大させたい」、現地の原爆被爆者と子孫の会の会長代行・小川直樹さんは「この火は絶対に消したらいけない。すごい責任を感じる。世界は戦争、テロ、暴力、核兵器の問題に直面している。この灯を得たことで、さらに平和を訴えていきたい」との意気込みを述べた。
〃分灯の使者〃井上祐見(歌手)は、火が贈られる平和資料館を創立した「小川和己さん(故人)の想いが私たちに伝わって、長崎県を動かし、今こうして一回りして戻って来た。今回それを小川さんの墓前に報告したい」と力を込めた。
また、笠戸丸ともやすくんは長崎市立福田小学校コーラス部の皆さんからもらったメッセージを披露した。
12日に現地、サンタカタリーナ州ラーモス平和の鐘公園で「分灯セレモニー」が行われる。その後、ラーモス市が責任もって種火を保存して平和の火モニュメントを完成させ、長崎原爆投下の日である来年8月9日に点火式が行われる予定。