広島の地元紙、中国新聞で「記憶を受け継ぐ」という被爆体験を語る連載がある。サンパウロ在住で懇意にしている谷口範之さんの友人が出ていたので切り抜きを持って帰った。紙面を見ながら「顔の色つやもいいねえ。数日前に電話で話した。声も元気で『まだまだ生きそうだな』と笑ったばかり」と話す谷口さんは、シベリア抑留経験者。卒寿の二人の体験者に触れたこと自体が将来、すごい経験になるのかも▼現在、軍隊を経験した人は約3%、幼少期に戦争体験した人は約10%だという。終戦70年を迎える今年、メディアでもこの節目をテーマにした記事や番組が目についた。本紙でも紹介しているが、勝ち負け問題も広く論議されるようになっている▼ブラジルでも平和関連の動きがあった。広島文化センターは創立60周年の記念行事で、原爆ポスター展をサンパウロ市で開いた。ブラジル被爆者平和協会は例年に比べ講演の依頼が倍増したという。長崎市の平和の灯が海を渡り、今週末にラーモス移住地で分灯式が行われる。同地にも被爆者協会がある。今後平和活動が行われることを期待したい。惜しむらくはレジストロで続いていた平和灯ろう流し。来年から再開されるよう関係者の尽力に期待したい▼おりしも、広島市の原爆資料館にある原爆投下時刻、午前8時15分で止まった懐中時計の短針が錆で折れたニュースに触れた。息子から贈られたものを被爆者が肌身離さず持ち歩いていたもので遺族から寄贈されたのが、コラム子が生まれた1975年。自分と同じ年だけ平和を訴え続けた短針。現在修復中と聞き、力がでた。(剛)