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叙任状を持つ飯田さん
叙任状を持つ飯田さん

中南米に『酒サムライ』誕生=飯田龍也アレシャンドレさん=「百聞は一杯にしかず!」

 「いつかは『酒サムライ』になれるようにと思って頑張ってきました」――この称号は、日本酒造青年協議会(関谷健会長)=東京都=が日本酒文化の普及に貢献した功労者に与えるもの。今年は国内外から7人が叙任され、飯田龍也アレシャンドレさん(40、二世)が中南米地域から初めて叙任された。喜びに沸く飯田さんに4日、念願を叶えた現在の心境を聞いた。

 酒サムライ事業は05年から毎年行われ、今年は第10回を数える。過去の叙任者には、京都吉兆嵐山本店総料理長の徳岡邦夫氏や日本酒を飲みながら観覧する「ほろ酔いコンサート」を各地で行っている歌手の加藤登紀子もいる。全世界での叙任者は61人に上るが、日本国外の多くはアメリカに居住している。
 そんな北米一辺倒の中、10月16日、京都府賀茂御祖神社で行われた叙任式で、メキシコ以南にも初の『酒サムライ』が誕生した。
 酒サムライの推薦を受けたのは昨年の12月。10年前の当地進出以来の仲だという岩手銘酒・南部美人蔵元の久慈浩介氏からだった。
 サンパウロ市モエマ区の「酒蔵 ADEGA DE SAKE」オーナーの飯田さんは2004年から酒屋業を始め、当時不足していたポルトガル語での日本酒情報を自社サイトで集中的に発信し、注目を集めた。
 同店には100種類以上の日本酒や焼酎が並ぶ。年末の贈り物としての需要が最盛期を迎えるこの時期は通常の倍、月800本もの酒が売れるという。
 元々は缶ビール一本すら飲めない下戸だったが、日本酒の歴史と伝統を知るうちに魅了された。今では利き酒士の資格を取得し、ブラジルソムリエ協会や日本食レストランで日本酒の講師を務めるほどになった。
 同協議会サイトによれば、《日本酒を愛し守る「サムライ」として、日本文化と伝承技の結晶である日本酒が世界に誇れる文化である事を、世界にあまねく伝えていこう》との志を共有するものに称号が与えられる。
 ブラジル内はもちろん、サイトを通じてポルトガルやアルゼンチンなど非英語圏の国々への貴重な日本酒の情報発信源となっている飯田さん。その信条は、ずばり「百聞は一杯にしかず!」だ。
 叙任を受けさらに使命に燃えている飯田さんは、「中南米全体の理解向上に励まなければ」との決意を新たにしている。

 

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 日本酒に特別な思い入れがある飯田さんは、日本移民百周年の際、両国文化の融合として注目された「サケピリーニャ」について聞かれたとき、「そうした飲み方も悪くはないが、正しい飲み方を知って、日本酒本来の美味しさを感じて欲しい」と半ば否定的に力説したという。一世がサケピリーニャを礼賛し、二世が「正しい日本酒を」と訴えるという逆転の構図自体が、何事にもおおらかなブラジルらしい?