サンパウロ市で33年間、映画のビデオ・レンタルの大型店として知られて来た「2001」が19日に閉店を発表、市内の映画ファンの間に悲しみが広がっている。
「2001」は、1982年に操業を開始した映画のビデオ・レンタル店だった。同店は、市内一の繁華街であるパウリスタ大通りをはじめ、西部最大の繁華街のピニェイロス、シダーデ・ジャルジン、スマレーに支店を持ち、市内では同業他社を全く寄せ付けない強さを誇っていた。
人気の秘訣は、映画マニアをひきつける、マニアックな品揃えだった。映画マニア垂涎のビデオやDVDがここに行けばある、と評判な上、店員の多くは市内でも有数の映画マニアとして、顧客の映画への関心を高める役割を果たしていた。
そんな2001も、近年は苦戦の連続だった。その原因のひとつはネットによる映画のダウンロードだ。これにより、人気作のみならず、2001が得意とするマニアックな映画が、以前とは比べものにならないくらい容易に手に入るようになった。
第2は海賊版のDVDの違法販売だ。これはパウリスタ大通り近くのアウグスタ通りなどで頻繁に見られる光景だが、割高な正規価格で販売している2001は、安価な違法商売に足を引っ張られる形となった。
この前の二つはまだ違法だが、三つ目に来た合法的な新たな波がとどめを刺した。それが、動画配信サービス企業の台頭だ。アメリカに本社を持つネットフリックスや、ブラジル最大のケーブル・テレビの映画チャンネル「テレシネ」が運営する「NOW」といったサービスが、月額の安価な定額で映画を見放題にするサービスをはじめた。ある程度の見たいラインナップの作品群を、外に出ずして見ることのできるサービス登場で、2001の存在は苦しくなったのだ。
これらの要因により、アメリカなどの欧米諸国ではすでにビデオ・レンタル業が成立しなくなっているが、2001もそのあおりをうけたこととなる。
ただ、2001の社長のソニア・アブレウさんは、「ストリーミングや海賊版でも、近年のブラジルの景気後退のせいでもなく、人々のライフスタイルの多様化で、以前より人が映画に割く時間が減ったことが一番響いたのだと思う」と語っている。
現在、2001では、パウリスタとピニェイロスの残り2店舗の1月の閉店を前に、閉店セールをはじめている。かけつけた利用者の中には「この店には、ネットフリックスには登録されていない貴重な映画もたくさんあるのに」と閉店を惜しむ声が少なくない。
また、「2001」がサンパウロの映画ファンの映画への好奇心を高めた役割を重要視し、それが失われることで、サンパウロの映画ファンに与える悪影響を心配する声もあがっている。(22日付フォーリャ紙より)
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