ブラジル音楽史を代表する伝説の歌手、シコ・ブアルキ(71)が21日、リオデジャネイロ市の路上で若者から政治論争を売られた。
シコは同日、友人の映画監督らとリオ市南部のレブロン地区のレストランを出ようとした際、若者の集団から罵声を浴びせられた。
「おい、ペチスタ(労働者党支持者)」と声をかけられたシコが、「いかにも俺はペチスタだが」と答えると、若者は「クソ野郎め」と返した。シコは先日、ジウマ大統領の罷免に反対する文書に署名したばかりだ。
20代と見られる若者の群れの中には、ラッパーのトゥーリオ・デックの姿もあった。
トゥーリオが後にグローボ紙の取材に答えたところによると、彼はシコに対し「これだけ腐敗した政治が行われているのに、あなたはなぜ連邦政府を支持し続けているのか」と尋ね、さらに「あなたを含め、多くの偉大な音楽家たちはなぜこぞって労働者党を支持し続けているのか。僕には理解が出来ない」とからんだという。
シコは論争の間も声をあらげず、にこやかに話し続けた。ある若者が彼に「パリに住んでいる人は楽でいいよな」と言った時は、怪訝な顔で「どういうこと?」と問いかけた。その若者が「(シコが)パリに住んでいると聞いたことがある」と話すと、「ヴェージャ(スクープ系で知られる雑誌)でも読んでいるのかい?」と返している。
この口論の模様はビデオで録画され、ネット上やテレビでも流れて有名となった。
現在の与党の労働者党は、軍事政権時代(1964―85年)の学生運動家や組合活動家が中心となって出来た党で、シコ本人も60年代後半に軍事政権に反対し、イタリアに国外逃亡したいきさつがある。(22日付グローボ紙などより)