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町中が見守り病院で結婚式=ガンの新婦、写真も見ずに逝く

 サンパウロ州内陸部のサウト市のサンカミーロ病院で、25年間待ち望んだ結婚式を挙げた女性がいる。
 町の薬局で働いていたフェルナンダ・マゼットさんは、町中の人に知られ、慕われていた。
 そんな彼女がガンと診断され、サンカミーロ病院に入院したのは11月16日。酸素吸入が必要なほど病状が悪化していた彼女は、病院の外に一歩も出られないまま、12月14日に召された。
 彼女の夢は、25年間寄り添ってきたウイリアン・ナゲさんと正式に結婚する事だったが、院外に出る事さえかなわないフェルナンダさんの実情を知る人々は急遽、病院内で結婚式を挙げる事を決めた。
 写真家のマルセロ・モトゾノさんによれば、スタジオに電話がかかり、「30分あれば結婚式の写真を取れるか」と訊かれたので、病院に駆けつけたところ、酸素吸入のための管を鼻につないだ新婦がいたという。
 病院の職員や町の住民が衣装やブーケ、化粧品その他の品を調え、式の中で歌を歌ってくれる女性まで現れた。
 病院の中の小さなチャペルを埋めた会衆が、結婚の喜びと別離の悲しみが入り混じった涙を流しながら見守る中、白いドレスに白い花輪の冠を被り、車椅子で表れた新婦が新郎と愛の口付けを交わす様子、新婦と手をつなぎ、車椅子の傍らに立つ新郎が涙に咽ぶ様子などは全て、モトゾノさんのカメラに収められた。
 モトゾノさんはこの結婚式の事を「決して忘れられない」という。「これまでの結婚式は皆、新婦を知っていたけど、酸素のチューブをつけたフェルナンダさんを目の当たりにした時の光景は強烈で、何もかもがいつも見慣れた結婚式とは違っていた」という。
 感動を暖めつつ、コンピューターの前に座ったモトゾノさんは、その場でフェイスブックを見、フェルナンダさんが長年の夢だった結婚式の写真さえ見ずに逝ってしまった事を知った。
 モトゾノさんは彼女への顕彰のため、編集し終えた写真をフェイスブックに掲載した。サウトの町の病院の活動を一切麻痺させ、モトゾノさんをして「愛の持つ力をまざまざと見せつけ、人々の心に感動を刻み付けた」といわしめた式の写真は、あっという間にシェアの数が4500回を超え、人々の心に感動を与え続けている。(23日付G1サイトより)