ホーム | 連載 | 2015年 | 静岡県菊川市=外国人児童の教育現場は今=人格形成と社会適応の現実 | 静岡県菊川市=外国人児童の教育現場は今=人格形成と社会適応の現実=(8)=抽象概念を発達させる重要性
授業の様子
授業の様子

静岡県菊川市=外国人児童の教育現場は今=人格形成と社会適応の現実=(8)=抽象概念を発達させる重要性

授業の様子

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 そういったこともあり、同教室では、日語だけでなく、母語で読書をすることの大切さも訴えている。「読書は抽象概念を発達させる。10歳以上で来日する場合は、母語が確立しないと日本語も進歩しない」と山下さん。
 10歳前後ですでに母語が確立されている場合、その母語を中心に人格形成した方が、同じ内容を教えるにしても効率的だと言われる。ただし、移民家庭の場合、移住先の公立校にいれたら、それは難しい。
 親は「子供はすぐに現地語に慣れ母語は忘れない」と短絡的な理想を持つが、話せるだけのバイリンガルなのか、2言語で学習ができるのかは、別の次元である。
 それならば、現地の言葉、日本なら日本語で論理的思考能力、抽象概念能力を発達させていくほかない。その上で、母語を勉強できる機会を作るのが理想的ではないか。
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 全国の虹の架け橋教室の中でも、公立校への高い転入率を誇る両教室だが、高校進学は簡単ではないという。
 「日常会話は4カ月から6カ月で身についても、学習言語は7、8年かかるというデータがある。わからない言葉があったら辞書で調べなさいと言って学校に送り出すしかない」と山下さん。ここで学ぶのは、学校で学ぶための最低限の武器だ。
 前述の市の担当者も「日本に来るときの子供の年齢を考えてほしい」と苦しい胸の内を明かす。
 こうした厳しい条件でも、同教室を経て高校へ進学・卒業した生徒や、市内で通訳として活躍する若者も出ている。
 教室を提供している菊川南陵高校は、奨学金を出したり、学費のためのアルバイトの許可をするなど、外国籍生徒の受け入れに好意的だ。
 子供たちを受け入れた公立校の現場からも、虹の架け橋教室は評価を受け、常設化を希望されている。常に一定の外国人が転入してくる地域には必要な役割であろう。
 しかしそんな追い風もある中、焼津の志太教室は今年度で閉校になる予定だという。今年度は同協会が県の雇用拡大プラン・人材育成事業として補助を受け、辛うじて継続してきたが、焼津市が来年度からの同教室への財政支援に難色を示しているのである。
 同市は週に1度、2時間の取り出し指導を教育委員会で行うことで対応する予定だというが、それだけでは不十分だったのは、これまでの経験から明らかではないだろうか。
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 12月6日、藤枝市の文化センターで、日本インターネットスクール協会(山下泰孝理事)が運営する、焼津(志太)と菊川の虹の架け橋教室の合同同窓会が行われ、初年度から現役の児童・生徒や、講師ら約50人が集まった。
 卒業以来の再会に、顔を合わせるなり涙を流したり、感激して抱き合ったりする姿が見られた。
 会場に入ってくる子供たちに一人ひとり名前を呼んで声をかけるのは、前市岡(まえいちおか)博美さん。72年に最後から2番目の移民船でブラジルへ渡り、パウリスタ通りで日本食レストラン前長(まえちょう)を営んでいたが、10年ほど前に帰国。現在地元焼津で、同教室の講師をしている。(つづく、秋山郁美通信員)