「夢はF1。憧れのセナのようになりたい」――。17歳の若き日系レーサー、大村イゴール・フラガさんはそんな大志を胸に、ブラジル国内のF3選手権ライツという舞台で健闘を見せた。今季最終ラウンドのサンパウロ市インテルラゴスでは、12月12日の第15戦で2位、13日の第16戦ではなんと優勝を果たした。参戦初年度を年間3位で終えたが、「身体、精神力、技術まだどれも足らない」と、夢の舞台へ課題を口にした。
イゴールさんは1998年、石川県金沢市で生を受けた。父ファブリツィオさん、母カツミ・ジアナさん(三世)が90年頃からデカセギし、不況で帰国する小学校6年生までを日本で過ごした。現在は故郷のミナス州イパチンガで、両親と共に暮らしている。
彼のドライバー人生は、カーレース好きな父に連れられサーキット場へ行ったことに始まる。「熱い思いが込み上げてきた」と振り返る青年は、4歳からハンドルを握った。滋賀県のカート場で練習を重ねながら、小学校に進学する頃には、日本国内のキッズレースで優勝するなど頭角を現す。10歳には、年代別アジア王者にも輝いた。
10年の帰国後は毎週サーキット場に通い、ジムで鍛錬を積む日々を送る。今年から7社のスポンサーを得て、ブラジル国内8会場を転戦するF3ライツに参戦。13日には全日程を消化した。16戦4勝で8人中3位という成績にも、「もっと実力を身につけ、スポンサーも獲得しなければならない」と課題を口に。「近い将来、機会を見て米国に拠点を移しステップアップしたい」と展望した。
夢は自動車レースの最高峰F1。尊敬するのは世界的にも有名なブラジル人ドライバー、アイルトン・セナだ。偉大な先輩に肩を並べるためには、南米F3や欧州F3を経て、さらに上位の欧州GP2シリーズ、北米インディライツなど国際舞台での実績が必要。ブラジルF3はいわばその登竜門といえる。
在日時のF1では日本人ドライバーの活躍も目立った。「佐藤琢磨や小林可夢偉が表彰台に上がる姿には感動した。テレビを見ながら思わずガッツポーズしていた」と目を輝かせる姿には、日本へのサウダーデを覗かせる。
「日本は僕の生まれ育った場所。友人も多く懐かしい思い出ばかり」と懐古するが、まだ一度も帰国は叶っていない。「日本からも応援してほしい。それに応える成績を残さなければいけない。そしていつかは日本で凱旋レースを」――。生まれ故郷への思いを胸に、若き日系レーサーは活躍を誓った。
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ブラジルF3の日系レーサー、大村イゴールさんは小学3年生の頃、地元のNHK金沢に出演。「(元F1ドライバーの)ミハエル・シューマッハは7回くらいチャンピオンを獲っているのでそれを超えたいですね」。幼姿でそう応える映像をインターネットで見ることができた。日本国内のレースは、キャンピングカーに乗って家族で転戦。母は記録係、父はエンジン調整係として家族一丸となって奮闘したという。そんな姿にこちらも感動。若き日系レーサーに皆さんもぜひ声援を!