「富め明日、トメアスー」。そんな特徴的なのぼりが目を引くのは、サンパウロ市南部にあるポルキロ『トメアスー』だ。同店では年に数回、パラー州の名物料理『マニソバ』が並ぶ。マンジョッカの葉を1週間煮込み続ける手間のかかる料理だ。「パラー文化を発信したい」と労を惜しまず提供する。故郷を愛する思いからだ。
トメアスー農業組合の職員だったが、デカセギを機に退職し、日本で出会ったナンシーさんと結婚。深山さんが料理上手だったこともあり、サンパウロ市でレストランを始めることに決めた。
2010年、レストラン開業にあたり「日系人なら『トメアスー』という言葉で移住地を想像して、日本料理屋だと気付くはず」とあえて日本風の店名は付けなかった。きんぴらや納豆などの日本料理、ジャンブーの佃煮やパパイヤの味噌漬けといったコロニア料理をポルキロ形式で約50種取り揃え、「家庭的な味が落ち着く」と客の8割が日系人となるほど、その心を掴んだ。
レジ横にはトメアスー文化農業振興協会のパンフレットや同地特産のアサイージャム、ノニジュースが置かれ、常連客からは「トメアスーの民間大使の様」と親しまれている。
黒くドロッとした見た目から敬遠されることが多いマニソバだが、「朝夕食べてもいいくらい美味しい」と味には定評がある。マニソバは不定期なので興味のある人は事前に確認が必要だ。(石)
▼レストラン『トメアスー』、住所=Rua Guaraú, 122(サンパウロ市プラサ・ダ・アルボレ駅から徒歩2分)、営業時間=月~土曜日の午前11時~午後3時まで、電話=(11)5589・9124。