1949年、サンパウロ市郊外ABC地区サンベルナルド・ド・カンポ市を通って、狩りに出ていた猟師達はよく、狩りへの道すがら、サンタ・デマルシさんに「狩りの帰りに食事がしたいんだけど、鶏を絞めて昼飯を用意しておいてくれないかな」と声をかけた。
家の庭で育てられた鶏はハーブで味付けられ、トマトソースとポレンタ(コーンミール)を添えて提供された。
猟師達は次第に、週末には家族も連れてくるようになり、サンタ・デマルシさんはその都度、食卓を増やした。こうやって広げていくうちに、スペースは遂に1万6千平方メートル(サッカーコート2面分)にもなった。今年の1月4日に閉店するまで、67年にわたって愛されたレストラン、〃サンジューダス・タデウ〃の起源だ。
このレストランは1階だけで2850人を収容し、イベント時には2階も開けて4200人が一度に食事を楽しめた。
「こんなサイズのレストランはもうどこにもない。固定費も桁違い。今のレストランはもっと小さくて、お客を回転させるスタイルだから。ABC地区も経済危機の影響は免れなかった。近年は収益も落ちていたし、閉店は仕方なかった」と、ここ数年、店を取り仕切ってきた孫のヴィニシウスさんは語る。
最盛期には名物料理〃ロッタ・デ・フランゴ、ポレンタ添え〃で有名になり、近隣には成功にあやかろうと、メニューを真似る店も現れ、有名人も多く訪れた。2005年は月平均6万5千人が訪れ、1990年の母の日には1日で1万1千人を迎えた同店も、最近は月々1万8千人程度の客の入りになっていた。
「マラドーナやペレ、ミルトン・ナシメント、トッキーニョ、セルジオ・レイス、シャトンジーニョ、ショロロも来てくれたよ。でも、歌手のロベルト・カルロスにも一度は来て欲しかったなあ」とヴィニシウスさんは振り返る。
〃サンジューダス・タデウ〃は、政治家達がサンベルナルド・ド・カンポ市に住むルーラ前大統領を囲んで会食を行う場としても知られていた。だが、ヴィニシウスさんによれば、「ルーラのお気に入りだったとよく言われるけど、ここ数年は2、3回しか来ていない」という。
同レストランはジュンジャイー市とサンベルナルド・プラザ・ショッピングの2店のフランチャイズがあり、そこでの営業は続けられる。(7日フォーリャ紙サイトより)