先日、某テレビ局のニュース番組編集局長に、「インピーチメント(大統領罷免)の可能性はどのぐらいあるか?」と尋ねたところ、あっさり「難しいね」と答えてきた。理由を問うと、下院で受理された財政責任法を根拠にした罷免請求に対し、ジウマは年末に粉飾会計を清算するなどの対処をしており、罷免申請の審議が実際に開始される2月の時点では相当に対策が施されて、論拠が弱められた状態に変わっているだろうと予測した▼皆が指摘することだが、3月に予告されている抗議行動が盛り上がるかどうかが、インピーチメントの行方を握る。もしも大人数なら、罷免に投票するか迷っている連邦議員の背中を強く推す。ただし、同編集局長は「クーニャが早々に辞めさせられないとデモは盛り上がらない」と見ている。つまり、2月から始まる最高裁のクーニャ下院議長の更迭審議の進展が、インピーチメントに大きな影響を与えるようだ▼彼は「むしろ、選挙高等裁判所(TSE)に申請されている大統領選での違法な選挙活動の審議の方こそ可能性があると見ている。ペトロロン疑惑の賄賂が大統領選挙資金に流れ込んでいると指摘されている件だ。そうなるとシャッパごと(副大統領も)罷免になる」とも▼たしかに「立法」(連邦議会)のCPI(議会調査委員会)で疑惑が解明されることはないが、近年の「司法」の活躍ぶりはラヴァ・ジャット作戦に象徴される通り目覚ましい。裁判で「罷免」なら史上初だ▼加えて「いつ頃になったらリオ五輪の雰囲気が盛り上がるか」と訊くと、「サッカーW杯も一カ月前になってようやく盛り上がった。今回も同じ。だいたいリオ五輪が成功したら、PTやジウマの手柄になると、みんな思っている。だから反対派はリオ五輪の成功すら期待していない」とし、10月の地方選挙直前というタイミングが、一般市民がリオ五輪を斜めに見る雰囲気につながっていると分析した▼TVクルツーラのニュース(4日夜)で、歴史学者マルコ・アントニオ・ヴィラが「リオの公立病院では大病を患った市民に使うガーゼを買う金すらないのに、五輪施設には目もくらむような大金が投じられている。このお金の使い方は明らかに間違っている」と政権批判をしていた。五輪開催を素直に喜ぶというよりは、そんな雰囲気が濃厚だ▼件の編集局長に「もしインピーチメントが五輪直前に起きたら、誰が開会式でブラジルを代表するのか?」と聞くと、「クーニャだけはゴメンだな。かといってレナンも危なくなってきているし―」と口ごもった。実は誰もそこまで考えていない…。最悪のシナリオを考えた場合、正副大統領がシャッパごと罷免、下院・上院議長も―となれば、残るは最高裁長官が暫定大統領に…。万が一そうなれば、まさに前代未聞。スポーツ記録以外でも大いに話題を呼ぶ五輪になるかも。(深)