スザノ在住の藤田朝壽(とし、愛媛県北宇和郡、91)の自選歌集『赭き大地を』から、戦前のチエテ移住地の様子を生き生きと描いたエッセイ3編を、著者の許可の元に転載する。
藤田さんが短歌を始めたきっかけを描いた『(1)歌人志津野華絵と「寄生木」』、わずか3回で終わったしまった幻の回覧誌「寄生木」の顛末を描いた『(2) 幻の歌集』、戦争中に日本語の本を町まで買いにいくハラハラドキドキの様子を「敵中横断三百里」に喩えて描いた『(3)梱包の歌集は日の目を見た』の3編。
藤田さんの筆名は「藤田朝日子」(あさひご)。「亡き妻に捧げるためにこの歌集を作った。妻は『あんたは人の歌ばっかり添削して、どうして自分の歌集を出さないの』といつも言っていたから」と少し照れくさそうに笑った。