【北米報知15年12月10日】シアトル・マリナーズの日系社会の象徴となる日本人選手の顔が変わる。チームは3日、青木宣親外野手との契約を正式に発表、セーフコフィールドで記者会見を行った。契約は1年550万ドルで2年目は球団がオプションを持つ。一方、岩隈久志投手はロサンゼルス・ドジャースとの契約合意が報じられていたが、最終的にはマリナーズと再契約した。
青木選手は「マリナーズは学生時代からテレビで見てきた憧れの球団」と入団の喜びを語った。背番号は8。「ワールドシリーズを勝ちたい」と、ファンの念願についても目標として挙げている。
同席したジェリー・ディポトGMは、日本時代を含め毎年安定した成績を残し続けている点、またマリナーズが新たに目指す野球に適応できる選手として高く評価。来シーズンは外野手を固定せず、ネルソン・クルーズ選手らDHを含め5人でローテーションする意向だが、青木選手に限っては、左翼、右翼、中堅のいずれかで「毎日出場し続ける選手」として期待している。打順は1番を想定している。
シーズン途中で離脱を余儀なくされた脳震とうの影響も、すでにトレーニングをハードに続けていることを明かし、 「問題なくシーズンに臨めると思います」と自信を見せた。マリナーズではマック鈴木氏、佐々木一浩氏、長谷川滋利氏、木田優夫氏、城島健司氏、岩隈投手、イチロー選手、川崎宗則選手に続き9人目の日本人選手となる。
日系関係者が集まった同日夕方の会合では、青木選手の話題がさっそく上がり、地元日系団体の連合「日系コミュニティーネットワーク(NCN)」で歓迎会を企画する方向でまとまっている。企画に参加するトミオ・モリグチ本紙発行人も、「日系社会は長い歴史もあり、日本人選手の応援を続けたい」と話し、新たな顔となる青木選手の移籍を歓迎した。
地元日系社会では、セーフコフィールドでジャパンナイトを開催、これまで日本人選手が数多く在籍しているマリナーズとの友好関係を築いている。NCNではドン・ワカマツ前監督を始め、マリナーズ日系関係者、日本人選手の歓迎会を主催しており、岩隈投手の歓迎会も13年にワ州日本文化センターで開かれている。
マリナーズは連日、トレードや新契約を発表、ディポトGMによるチーム改革はやむことなく続いている。一部主力選手を除き、来年は新しいマリナーズが姿を見せることになる。(N・A・P、編註=岩隈投手の経緯は記事発表時から変化したので一部書き換えた)
コラム「一石」=新たな関係構築
【北米報知15年12月10日】シアトル・シーホークスの躍進もあり、岩隈久志選手の活躍以外はコミュニティーでめっきり話題に上がらなくなったシアトル・マリナーズ。今月、青木宣親選手が加わり、地元コミュニティーでも新たな「日本の顔」として期待が寄せられている。契約発表当日の日系コミュニティーの会合でもさっそく歓迎会準備へ向けての議題が出た。
マリナーズは、任天堂が筆頭オーナーとなってから、日本との本格的なつながりが続いている。筆者のようにまだ日の浅い人間は別にして、多くのコミュニティー関係者は各時代に強い思い入れがあるだろう。
チーム自体はスター選手を抱えた90年代やイチロー選手らが活躍した2000年前半という 「良い時期」はあったが、歴史の大半は残念ながら下位低迷が続いており、申し訳ないが大リーグ史上でも有数の「弱い球団」でもある。何とか盛り返してもらいたい、とは毎年の願いだ。
その一方でマリナーズの知名度は著しく高い。青木選手が日本で試合をテレビ観戦していたマリナーズと同様、シアトルを日本で「最も有名な米国都市」の1つにしたのは、他でもない彼らマリナーズの日本人選手だ。青木選手で9人目。イチロー選手という別格はあるが、いずれにしてもそれぞれが「シアトルの顔」として大きな貢献を果たしてくれた。
コミュニティー側も、それに対する感謝の念は尽きない。毎年のコミュニティーによるジャパンナイトの企画(マリナーズとの話し合いがうまくいかない年もあったが)もその一つだろう。
青木選手は岩隈選手と同年代ということもあり、契約合意後に連絡を取り合ったという。
ノーヒッターを達成した昨年、ジャパンナイトの開催、地元日系社会での歓迎会と、コミュニティーも岩隈投手とは4年間でいろいろな思い出を作ってきた。
この夏には女子バスケットボールの渡嘉敷来夢選手も活躍。スポーツ界でのシアトルと日本の橋渡しは常に強いものがある。
今度新たな顔となる青木選手にもコミュニティーと良好な関係を築いてもらいたい。(佐々木志峰)
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