ブラジル音楽界の70年代を代表するスター、ネイ・マットグロッソの同時代の作品をまとめた作品集「アノス70(70年代)」がCD6枚組セットに未発表曲をつけて発表された。
ブラジル音楽の70年代と言えば、カエターノ・ヴェローゾ、エリス・レジーナ、ジルベルト・ジル、シコ・ブアルキ、ミルトン・ナシメントなど、国際的知名度も高い錚々たる人材が活躍した時代だが、ネイ・マットグロッソの存在も忘れてはならない。
ロック・バンド、「セコス&モリャードス」のヴォーカルとして72年にデビューしたネイは、アメリカのロック・バンド、キッスに先駆ける白塗りの歌舞伎風メイクと性別不明の高音の歌声でブラジル国中で一世を風靡、ラウル・セイシャスやヒタ・リーと並んで同時期のブラジルのロック界を牽引した。
ネイは74年、セコスの人気絶頂期にメンバーと喧嘩別れしてソロに転向した。今回の6枚組セットは70年代におけるソロ時代の彼のアルバム全てを収めたものだ。
2008年には彼の91年までのキャリアを全曲収めた「カメレオン」という作品が出たが、この作品は、レコード会社がソロ最初の3作のオリジナルのマスターテープを紛失し、過去のLPやCDから音を録音して発売するという、音質的には劣悪なものだった。
今回の「アノス70」は、めでたくマスターテープが再発見され、改めてリマスターした上で発表された。
この件に関し、ネイ自身も「特に(名作との評価の高い)『バンジード(76年)』はLPが出たときの音もひどかっただけに、改良されていてうれしい」と喜びの発言を行っている。
ネイは、ブラジルきってのアート派の歌手として有名だ。超人気バンドだったセコス脱退直後に出した初のソロ作「アグア・ド・セウ・パッサロ」は、「自然との一体化」を目指すあまり、川のせせらぎや動物の鳴き声まで録音したが、「当時、一番信頼していた批評家にも理解されなかったよ」とネイが振り返るほどで、ファンをがっかりさせてもいた。
だが、その後、「バンジード」「ペカード」(77年)「フェイチッソ」(78年)をヒットさせ、ネイはスターとして君臨。歌舞伎メイクではなくなったが、ステージでの衣装は性を超越、それこそ先日他界したイギリスのデヴィッド・ボウイ顔負けのファッションに身を包んでいた。
ネイは74歳となったが、その艶やかなハイトーンは健在だ。現在も上半身をさらし、金、銀をまばゆくあしらった全身タイツの衣装でステージに立ち、尊敬を浴び続けている。
彼の音源は、配信サービスのアップル・ミュージックなどを通して世界中で聴くことが出来る。(19日付エスタード紙より)
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