ホーム | ビジネスニュース | Selic=大幅な上昇は見送りへ=直前のIMF観測発表で=連邦政府やPTはひと安心=「中銀への政治介入」の声も
アレッシャンドレ・トンビニ中銀総裁(Antonio Cruz/Agência Brasil)
アレッシャンドレ・トンビニ中銀総裁(Antonio Cruz/Agência Brasil)

Selic=大幅な上昇は見送りへ=直前のIMF観測発表で=連邦政府やPTはひと安心=「中銀への政治介入」の声も

 中央銀行のアレッシャンドレ・トンビニ総裁が19日、同日発表された国際通貨基金(IMF)のブラジルの国内総生産(GDP)の予測を受け、異例の声明を発表した。これにより、19、20日開催の通貨政策委員会(Copom)で経済基本金利(Seic)が0・50%ポイント引き上げられるという、市場関係者の予想が実現する可能性は実質的になくなった。これを受け、政界や経済界からは賛否両論の声が飛んでいると20日付伯字紙が報じている。

 昨日付本紙でも報じたように、IMFは16年のブラジルの国内総生産(GDP)はマイナス3・5%、17年もゼロ成長と予測した。
 これは、16年のGDPをマイナス1・9%と予測していた中銀の予測よりも大幅に悪い。中銀の予測は昨年末、市場関係者からも「楽観的過ぎる」と槍玉に上がっていたが、IMFの数字は、その市場関係者たちが予想していた、16年2・99%減、17年1%増という数字よりも悪いものだった。
 この発表後、トンビニ総裁が「IMFのデータは非常に重要」との見解を発表したことで、市場では、今回の委員会でのSelic引き上げは当初予想の0・5%P増ではなく、0・25%P増、もしくは現状の14・25%を維持するとの見方が強まった。
 これを受け、喜んだのは連邦政府と、労働者党(PT)だ。連邦政府の中では、現在のこの景気後退の中、インフレを恐れるあまりにSelicを大きく上げることが果たして効果的かという疑問と共に、Selicの大幅上昇で、生産活動や消費のペースがより落ちてしまわないかという強い疑念があった。
 また、労働者党(PT)の上層部でも安堵の声が流れている。彼らの間でも、景気後退に伴って失業率も悪化する中でSelicを上げることは、より一層の投資の低下を招いてしまうことになると見ていた。
 こうした流れにより、Selicは連邦政府寄りの数字に落ち着きそうだが、これに対し、市場からは反発の声が漏れてもいる。
 米国のBBH銀行は、顧客への通信の中で、中銀が独立性を欠いた判断をしたとし、「IMFの予測を考慮に入れる中銀など、世界中どこにもない。こうした、これまでにない方針の変更を行うと、投資家たちの悪印象を招くことになる」と警鐘を鳴らしている。
 また、Copom前日の18日に、トンビニ総裁はジウマ大統領と会談を行っているが、この行為を、連邦政府やPTによる中銀介入と見て批判する向きも少なくない。