【共同】外国での犯罪に巻き込まれた日本人を守ろうと、関西の弁護士や大学教授ら約10人で結成した「国境なき刑事弁護団」(大阪市北区)が支援活動に取り組んでいる。言葉が通じず刑事手続きも異なる海外では、弁護士や通訳の問題から無実を訴えても相手にされないことがあり、メンバーの正木幸博弁護士は「ノウハウを生かして困っている人を助けたい」と語る。
2002年に在住していたタイからオーストラリアに入国し、薬物密輸容疑で逮捕された日本人男性は、冤罪を訴えたのに、現地の弁護人から「無罪でも有罪と答えたケースはある。罪を認めれば刑は軽くなる」と持ち掛けられた。
薬物が見つかったのは、タイの知人から「友人に渡してほしい」と託された日本酒の一升瓶。男性は知らないうちに運び屋をさせられていた。
男性の家族から相談を受けた正木弁護士らは、動機がないことを立証しようと、男性が経済的に困っていないことを示す証拠を日本で集めた。現地の弁護人に無罪主張するよう働き掛け、オーストラリアの陪審員は無罪の評決を言い渡した。
アルゼンチンで08年に逮捕された昆虫収集家の男性のケースでは、珍しい昆虫を持ち出すために現地で受け取った許可証が偽造されていた。
通訳は、関与を否定する男性に「有能な弁護士」として自分の娘を紹介。選任されると数百万円の着手金を要求して受け取り、罪を認めるよう態度を一転させたという。正木弁護士らの支援後に通訳と弁護士は解任され、無罪を勝ち取った。
刑事弁護団は昨年2月に結成し、無報酬で活動。渡航費などに充てる費用の寄付を募っており、理事の山下潔弁護士は「依頼者は経済的に困っている人が多く、寄付は活動の命綱。ぜひ支えてほしい」と話している。
問い合わせは弁護団事務局06(6362)9615。
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