28日より、ブラジル映画史上の興行新記録の期待が込められた、映画「オス・デース・マンダメントス(十戒)」の公開がはじまった。既に前売り券300万枚を売った、などとも伝えられていた同作だが、各地の映画館では早速意外な事態が起こっているという。
報道によっては、「大入り満員で大盛況」と報じているところもあるのだが、どうやらそれは、ウニベルサル教会の支部に地理的に近い映画館だけで起きていることのようだ。
同映画は昨年、レコルデ局でノヴェーラとして放送されており、高視聴率を記録していたが、同局の会長がウニベルサルのエジル・マセド司教だ。
公開前の報道では、ウニベルサルの関係者が前売り券を大量に買占め、教会内でも信者にテレビモニターで予告編を流しながら、この映画を見に行くように盛んに宣伝していたと言われている。
さらに「貧しくて見にいけない信者のために」と称して信者から献金を集め、その金で前売り券を大量購入していたとも呼ばれ、ペルナンブッコ州レシフェ市では、関係者と思しき人物が1人で2万2千枚のチケットを買い上げたとの報道もあった。
ただ、買い占めたまでは良かったが、チケットの受け取り手を見つけるのに苦労したのか、映画館によっては、売り切れという話が嘘のようにガラガラのところも目立っているという。
それを象徴的に示しているのが、実際に映画館に足を運んだ人たちが携帯電話で撮影した写真だ。ネット上に上げられた写真の中には、「映画館の下からカメラで覗き込んだら、半分も埋まっていなかった」という写真も少なくなかった。
ネット上に掲載された写真で明白になった映画館での空席状況は、公開日のうちに話題となり、それをからかって即座に作られた大量の冗談画像と共にネット上をにぎわせている。
あえて空席状況について分析するならば、ブラジルの場合、映画公開日が動員数の低い木曜日となっているため、そのせいで人が集まらなかったと見ることも出来ないではない。土、日になれば映画館に足を運ぶ人も増えるだろう。
いずれにせよ、もう券は買われているので記録的な売り上げを記録する事実には変わりはない。だが、このまま、「席は買われたものの空席が目立つ」という状況が続いた場合は論争も起きかねないことだろう。(29日付アゴラ紙、フォーリャ紙などより)