【既報関連】世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は1日にジュネーヴで開かれた緊急委員会の勧告を受け、ブラジルなど中南米中心に25の国や地域で流行している「ジカ熱」に関し、「国際公衆衛生緊急事態」を宣言したと2日付伯字紙が報じた。
同事務局長は記者会見で、宣言を出した理由として、妊婦が感染すると「小頭症」の新生児が生まれることが強く疑われている点を強調した。ブラジル保健省の最新発表によると、1月23日までの段階で小頭症と確認されたのは270件、小頭症が疑われている症例も3448件ある。マルセロ・カストロ保健相は1日、小頭症児増加とジカ熱の相関関係は疑う余地なしと再度発言した。
WHOの宣言はリオ五輪開幕まであと半年あまりとなった今、ブラジル政府が最も恐れる、ブラジルへの旅行やブラジルとの交易を制限するものではない。
WHOは特効薬のない現状でとりうる対策は蚊の繁殖を抑えることと、胎児への影響が強く懸念される妊婦や免疫力の弱い幼児や高齢者が蚊に刺されることを防ぐことだとしている。
妊婦に向けては、長袖などを着用して蚊に刺されるのを防ぎ、ブラジル、中南米諸国への渡航を控える事が推奨されている。
ジャッケス・ヴァギネル官房長官は、同宣言の影響で短期的に見たブラジルへの外国人旅行者は減少すると思われるが、五輪開催期間中の観光客数に大きな影響は無いとの見方を示した。種々のキャンペーンで実態が明らかになれば長期的に見て現状は回復するはずとし、世界に類を見ない状況でブラジル政府もブラジル社会も困惑していると述べた。
WHOが国際衛生非常事態宣言を出した事で、ジカ熱の早期診断法や対抗ワクチンの開発にも拍車がかかる見通しだが、ジカ熱ウィルスで既存の免疫化の研究も実用化には3年はかかる。
デヴィッド・ヘイマン緊急委員会委員長は、ジカ熱は、自覚症状すらない例が80%で、そんなに危険な病気ではないが、神経系をやられると小頭症やギランバレー症候群を引き起こすため、注意が必要と強調した。