カルテス大統領は自身の国際イメージの向上に鋭意努めているが、その効果は余り芳しくない様だ。「カルテス」の名は国際誌のタバコ密輸に関する調査記事で、またもや槍玉に挙がった。
米外交問題評議会(CFR)が発行する国際政治経済ジャーナル「Foreign Affairs(フォーリン・アフェアーズ)」誌は、1920年代より種々の調査に基づくアメリカ州の地域経済状況を各研究視点より披瀝しており、この2月の最近号ではパラグァイのタバコの密輸に関する記事で、カルテスグループ中のタバコ会社TABESA(大統領カルテスが筆頭株主)に触れ、問題視している。
同記事は、わが国のタバコ総生産量に言及し、その驚くべき規模のレベルは国内消費量を遥かに凌駕するもので、正に理屈に合わない大きな矛盾であると指摘する。
世界の密輸タバコの11%を供給?!
国際投資・税務センター(英略はITIC)の資料では、2013年度のパラグァイのタバコ産業は、650億本の巻きタバコの生産実績を挙げているが、一方、同年の国内消費量は僅か25億本に過ぎなかった。
更にこの国内消費タバコの数量は、英系British American Tobacco社の資料ではたったの7億8千万本だったと同誌は報じている。
同調査記事は、「パラグァイのタバコ産業の実勢は世界の密輸タバコ供給量の11%相当を賄っている」と言う。
そして、パラグァイ産ブランドのタバコは、ラテンアメリカ16カ国の2014年度における密輸タバコ消費量の73%を占めているのである。
この大変な数字の差異は、明らかにパラグァイは国内消費の量よりも大量のタバコを密輸出している訳で、その筆頭輸出業者がカルテスのTABESA社だという筋書きだ。
「フォーリン・アフェアーズ」誌がTABESA社のマネージャの一人で、カルテスの右腕と言われるホセ・オルティス氏とのインタービューで、同人が曰く「我々は単にBritish American Tobacco及びPhilip Morris International両社が空けた間隙を補っているに過ぎない」と言う論法である。
そして、カルテスの擁護に大統領が常に述べる、「コントラバンド(密輸)は関係各国の税関の問題である」との論理を繰り返した。
犯罪グループとの関係は
べノワ・ゴミス(Benoit Gomis)及びナタリア・カリーリョ・ボテロ(Natalia Carrillo Botero)両記者によるこの「フォーリン・アフェアーズ」の調査記事は、さらに大胆にメキシコの残忍な2大犯罪組織のシナロア・カルテルとセタス・カルテルは夫々、資金工面の為にパラグァイの密輸タバコの流通に関わっていると指摘する。
前述のTBESA社のホセ・オルティス総支配人は、当地ABC紙の取材に対し、同社は如何なる犯罪グループとの関わりは一切ない旨を確言したが、他方「わが社のブランド・タバコが往々にして中米で偽造される事から、あらぬ疑惑や混乱を招いているのも事実だ」と認めた。
同社ではこれ等の不都合を避ける為に、タバコのパックにホログラム等色んな工夫を凝らすのだが、矢張り易々と偽造されて仕舞うと嘆く。一時期はタバコをメキシコへ輸出していたが、今ではその道を断った由である。現在はアメリカとアルバ国(蘭領)への輸出を行っていると。
なお、「フォーリン・アフェアーズ」の記事をどう見るかの質問には、「当社の支配株主であるカルテス大統領のイメージを汚すメディアの悪質な報道で、この様な事はカルテスが2018年にロペス宮殿を去るまで続くだろう」と語った。
生産の検閲とコントロールの欠如
同記事は英国のニュースソースとして、パラグァイのタバコ産業分野はいかに操作されているか、ある退役警察官の「生の直接情報」を紹介している。
その断言する処によれば、わが国のタバコ産業に関する全ての煩わずらわしい干渉やコントロールは、2013年にカルテス政権が就任して以来、一切停止された。
同レポートは、企業の横暴を制しその社会的責任を監視するCorporate Accountability International・国際企業責任機構(仮訳)のユール・フランシスコ・ドラド理事の発言を引用し、パラグァイではタバコ生産業をコントロールする数少ない非政府組織・NGOは今では、皆その活動を止めているとコメントした。
従い、パラグァイに関するこの部門の情勢評価に資する為の信用できる中立的な情報は皆無だと言う。
同じく、カルテス政権は政府に都合の悪い、全てのマスメディアによる調査報道を邪魔していると指摘した。
ちなみに当の合衆国で発行される「フォーリン・アフェアーズ」誌だが、タバコ密輸問題に対するアメリカ政府の妙な沈黙も不可解だと批判する。
なお、噂される膨大な資金洗浄の操作における、カルテスの明らかな介入の追及捜索に躍起だったワシントンの動きは、2011年に発覚した例のウィキリークスの問題が公開された以降は何故か後を絶ったままである。
同国際誌にとってはカルテス大統領が宣言する「汚職撲滅政策のチャンピオン」としての名声リバイバル達成の努力は明瞭ではなく無意味に映る。
カルテス大統領は、大変熱のこもった演説で、「汚職官吏は手を切られて処罰されるであろう」と宣告した。しかし、実際には大した粛清の結果は見られないのが実状である。
商工省のパブロ・クエバス産業次官(先日辞任)は、押し寄せるコントラバンドの怒涛は手に負えない勢いで、これまでに摘発された密輸の中で一件たりとも処罰された例はなく、当局は密輸取り締まり、又はその防止に充分な対策の予算も能力も持ち合わせないと告白した。(註・2月10日付ABC紙記事抄訳引用)