世界3大格付会社のスタンダード&プアーズ(S&P)が17日、ブラジルの格付ランクをジャンク級の中でも最上位のBB+から中位のBBに引き下げたと18日付伯字紙が報じた。
S&Pがブラジルの格付ランクを「投資不適格」を意味するBB+に引き下げたのは5カ月前の15年9月9日だ。この時は連邦政府が議会に基礎的財政収支が赤字となる事を前提とする予算案を提出した直後で、ブラジルの政治的、経済的な混乱は容易には回復しないとの見方が格下げで示された。
12月にはフィッチもブラジルを「投資不適格」に引き下げており、現在はムーディーズだけがブラジルを「優良債権国」としている。市場関係者は、昨年12月に格付見直しを示唆したM社が今年既に担当者を派遣した事もあり、近い内に格下げ必至と見ていたが、その前にS&Pが再度の格下げを行い、政府や市場関係者を驚かせた。
S&Pが短期間中に2度目の格下げを行った理由は、ブラジルの政治的、経済的状況に回復の兆しが見えず、むしろ、膠着状態または悪化していると判断したためだ。
ブラジルは15年に過去最大となる基礎的財政収支の赤字額を計上。今年の予算は承認されたが、支出削減案の発表が延期され、基礎的財政収支の黒字目標にも幅を持たせようとしている事が、今年も黒字目標は達成不能の意味でとられた。
S&Pは一応、16年のブラジルの国内総生産(GDP)は1%成長と見ているが、国際通貨基金は16年のブラジルGDPを188カ国中187番目のマイナス3・5%と予想。ブラジルより悪いと予想されたのはベネズエラのマイナス6%だけだ。
ジョアキン・レヴィ氏が財相だった時は、同氏を軸に財政調整を行い、景気回復に弾みをつけると期待していた国際機関もあったが、財政調整は一向に進まず、景気回復にも3~4年はかかるとの見方が一般的だ。
ネルソン・バルボーザ財相は17日、「S&Pによる格下げは一時的なもので、現在取り組んでいる種々の財政改革の結果が表れ始めたら、再び引き上げられる」との見解を表明したが、大統領罷免審議も含む議会の動きは決して楽観視出来ず、今後への懸念は拭い切れない。
S&Pはブラジルの格下げと同時に、財政再建が難航中のペトロブラスや、連邦貯蓄銀行、社会経済開発銀行(BNDES)といった公的銀行も含むブラジル企業36社の格付も引き下げた。