サンパウロ州バルエリ市で20、21日、HSBCワールドラグビー女子7人制シリーズが開催された。12チームが参加するこの国際大会は、5カ月半後に迫ったリオ五輪本番を占う意味で重要な大会だ。初日こそ3連敗したが、二日目は1勝して10位で終わり、リオ五輪本番に向けた課題を浮き彫りにした大会になった。(井戸規光生記者)
2月初旬からのアメリカ合宿を経てこの大会に挑む日本代表〃サクラセブンズ〃は、初日にイングランド、フランス、そして開催国のブラジルとグループCに入った。結果はイングランドに5―38、フランスに7―36、ブラジルには5―27で敗れ、3連敗を喫した。
初日の流れを決めたのはフランス戦、7―10で折り返した後半早々に敵陣深くまで攻め込むも、得点を奪えず逆にカウンターから独走トライを許したシーンだ。トライを奪えていれば逆転で、その後の展開も大きく違ったが、逆に差を拡げられた日本は、気落ちして失点を重ねた。
2戦続けての大敗を引きずったか、続くブラジル戦では、前半から失点が止まらず3連敗となった。
浅見敬子ヘッドコーチ(HC)は「初戦、2戦目と決して悪くない戦いだったが、結果が出なかった事で3戦目も引きずってしまった。明日もあるので切り替えて戦いたい」と語った。ゲームキャプテンを務める冨田真紀子は「これまで準備してきた事が出せずに3連敗してしまった。一人一人の問題。明日は切り替えて戦いたい」と気丈にコメント。
2日目、9―12位を決めるボウル・トーナメントに挑んだ日本は、初戦スペイン戦を、先制トライこそ許すも、後半の桑井亜乃、山口真理恵、山中美緒のトライで鮮やかに逆転し、17―7と大会初白星を挙げた。
怪我で登録を外れている主将の中村千春は「ゲームキャプテン冨田のリーダーシップは頼もしい限り、自分は少しでもチームの力になれるように来ている」と持ち上げ、「他チームが疲れて力が落ちてくる2日目に走り込みの成果が出ているが、初日からこれをださなくてはいけない」と今後の課題を総括した。
ロシアとのボウル・トーナメント決勝では、開始早々からロシアによる日本防御陣の外側を快速バックスが突く攻撃で出鼻をくじかれ、前半だけで0―24のリードを許した。後半は竹内亜弥と、末結希の連続トライで追いすがるも、突き放され12―38の敗戦を喫した。これでサクラセブンズは通算1勝4敗、12チーム中10位の成績で大会を終えた。
浅見HCは、大会を振り返って「新しい若いメンバーが思い切ってやって持ち味を出してくれた。特に攻撃面での収獲が大きかった」と語った。サクラセブンズはこのあとリオを視察し、24日に帰国の途に着く。
■ひとマチ点描■好印象残したサクラセブンズ
ワールドラグビー大会会場には、現地在住の駐在員ら日本人約50人が応援に駆けつけた。
武田圭介さん(42)は「今大会は怪我で出られないけれど、普段は主将を務める中村千春選手、トライゲッターでスピードのある山口真理恵選手に期待」と声を弾ませる。日高康行さん(44)からは「大会前の激励会で選手にお会いしたが、皆さん礼儀正しくて好印象。身体が小さいのに団結して頑張っている」等の声が上がった。
浅見HCは現地在住邦人のサポートにも「ここサンパウロ州でのサポートは格別。日本食の差し入れをしてくださったり、本当に助かっている。私たちはもっと結果でお返ししなくてはいけない」と謝意を表した。
2年前、サッカーW杯時の日本代表は外部との接触を完全シャットアウト、帰国時も、キャンプ地のイトゥー日系団体にすら声もかけずに、こそこそと居なくなった。勝敗とは関係なく、今回の開かれたラグビー協会の姿勢は、支援する現地邦人側にもさわやかな好印象を残した。(深)
2日間の試合動画