「人との出会いが今の私を作った」。2月13日、待ち合わせたリオ市のスターバックスで、そう語るのはサンバダンサーの工藤めぐみさん(30・兵庫県)だ。リオのカーニバルで上位の常連、名門エスコーラ「サルゲイロ」で花形ダンサー「パシスタ」を務めて8年になる。惜しくも今年の優勝は逃したが、充実の表情で滞在を振り返った。
神戸でダンス講師として活動する彼女が、初めてリオの地を踏んだのは19歳、04年のことだ。その後08年以降はほぼ毎年、カーニバルに参加するために3カ月間、年末から翌年の当日までリオ市に滞在し、厳しい練習に参加する。地元の若い女性の多くが憧れるチームの花形「パシスタ」のポジションを競り勝って維持してきた。
彼女が〃修行〃と呼ぶ生活はハードだ。週の練習は最低4回。不定期イベントなども含めると、踊らない日はほとんどない。「全ては日本に本場のサンバを伝えるため。リオではやり尽くして帰りたい」と語る。
彼女が心酔するサルゲイロの振付師カルリーニョスは、厳しい審美眼の持ち主で、ダンサー達を追い込む。「彼の逆鱗に触れて泣かされる子も続出」と語る。極めつけは「君はそれでも日本でサンバの先生なのか、下手なサンバなんか教えてどうする」の台詞だ。それでも、彼女以外の全員がブラジル人の中「サルゲイロのパシスタ」の名誉を手放すまいと食らい付く。
今年は彼女を取り巻く日本の環境が大きく変化した。東宝芸能に所属が決まり、新春にはNHKサンデースポーツの特番に当地から生中継出演、先月28日にはTBSのドキュメンタリー番組「情熱大陸」でカーニバル密着取材をされた内容が放送された。
「私がメディアに出る事で多くの人がサンバのこと知ってくれたら嬉しい。お色気ダンスと誤解している人がまだ多い。『格好良い』と言ってもらえたら最高の褒め言葉」と笑う。
昨年12月にリオ五輪開会式オーディションにも挑戦した。精一杯の踊りを披露し、「サルゲイロ所属の日本人パシスタ。リオと日本を往復して10年以上。リオと次回開催都市東京の架け橋になりたい」とポ語でスピーチをした。
念願かなって合格し、五輪に合わせて再来伯となれば、初のカーニバルシーズン以外での滞在となる。「五輪を契機にリオの魅力を紹介する仕事がしたい。気持ちを五輪に移していきたい」と目を輝かせる。結果発表は今年の3月か4月。今は日本で結果を知らせるメールを待つのみ。
「新しいステップに入りつつある。私の夢は、やっとこれから」と目を輝かせた。
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サンバの練習は毎回ハードなため、工藤さんは1回で3キロ近くも体重が減ると言っていた。そのため、彼女には「いかに痩せるか」ではなく「いかに体重を維持するか」が大切なテーマだ。取材日も、それに触れると「朝からカレーの大盛り食べてきました」との事。すでにリオの厳しい生活を終え、2月22日に帰国した。日本ではさすがに「朝からカレー大盛り」はない?!