アリアンサ 新津 稚鴎
羽立てて馬糞の上の木の葉蝶
足音のどすどす羽抜駝鳥来る
手綱つけ岩につないで大鯰
われに六句虚子入選句虚子祀る
群羊を吹き分けて行く秋の風
【サンパウロの婦人句友達がアリアンサを訪問したら、新津稚鴎さんの百寿祝いの当日だったそうで、お元気な句友・稚鴎さんをお祝いして来て良かったとの事。私は行けなかったので残念でした】
北海道・旭川市 両瀬 辰江
春日差す仏壇の香夫忌日
日脚伸ぶ引きとめられておしゃべりす
雛飾り余生明るく生きてたし
平穏な日々なり一人蜜柑むく
夕の鍋野菜はすべて越冬中
【又々御投句を頂きました。平安なご日常をお詠み下さって、安心させられました】
カンポスドジョルドン 鈴木 静林
雲の峰地の果てまでが甘蔗畑
夏帽子兄のお古るの船長帽
夏帽子手作り帽子菅笠風
山荘に人の気なくて寒い夏
夏出水哀れ新車水の底
ペレイラバレット 保田 渡南
短日のボヤーダ此処を泊りとす
雄牛のたたかい露の草を薙ぎ
巣を出でて蜂の怒れる野分かな
秋の山叫べば遠く応えあり
紺碧の空の高きに秋思かな
リベイロンピーレス 中馬 淳一
雨季猛けてブラジル各地大被害
ウインドーはサマードレス着てモデル
役者等はさっと着替えて夏衣装
船員の夏服まぶしく甲板に
降る雨を音なく受けて濃紫陽花
サンジョゼドスカンポス 大月 春水
積層雲なお高く積む酷暑かな
ノベラにかかりし電話を自分かと
※『ノベラ』はポルトガル語でTVドラマのこと。
汗びしょりカルナバール踊りぬく
サンパウロ 湯田南山子
初場所の琴奨菊に殊勲の功
初場所の満員御礼たれ通
十年の悲願の優勝琴奨菊
報われし汗と涙の初土俵
元寇の役のつづきや初土俵
イタチーバ 森西 茂行
秋祭扇子を持って舞い踊る
干し柿甘味濃厚故郷の味
弁当に吾が好物の隼人瓜
新米を油めしにし食進む
焼き魚脂したたるパクーかな
サンパウロ 鬼木 順子
初秋や里芋の葉に露光る
秋空に突刺すごとく虎尾草
百日草根元脇枝花盛り
笹やぶの葉音羽音雀出で
露草や下闇に青冴える
サンパウロ 寺田 雪恵
二人で見た月を忘れず夏時間
満月には少し間のあるがひとりぼち
よく晴れた残暑の月の涼しけり
蜻蛉飛ぶ夏の名残りを生きいきと
辞書買って待つ孫の夏果てて
サンパウロ 佐古田町子
わが米寿祝われ晴着吾が娘から
秋深み色づく葉々の舗道かな
落葉にも季を知る日々や老の候
さっそくに作句友より季語知らせ
心ゆるす友あり電話口時忘れ
マナウス 東 比呂
労いと祝い酌み合う去年今年
いくつかをもたげ叩いて買うメロン
なまけもの葉隠れ術で身を守り
なまけもの今日はどの木に登ろうか
マナウス 宿利 嵐舟
一人酒ほろりと酔うて去年今年
荒び世に神の怒りか大出水
忘れじのメロンの甘き恋の味
花見つつ鰆肴に昼の酒
マナウス 松田 永壱
大出水橋も水没遠まわり
揚がる国旗感動に沸くスポーツ場
書初めの草書に挑む傘寿翁
大海行く蝶の移動の浪のごと
マナウス 阿部 起也
食べごろか分からぬメロン手に余る
マナウスの我が家に一匹なまけもの
マナウス 阿部 真依
炎天下日射しを浴びて去年今年
出水増し交通渋滞待ちぼうけ
贅沢や年中食せるメロンかな
マナウス 山口 くに
ひまわりの畑で園児のピクニック
仔を術え泳ぐ母犬街出水
国旗の日テアトロシャミネの旗なびく
風疹の熱もメロンの味に癒ゆ
押して見て香いで叩いてメロン買う
旧年の恩情交して初句会
マナウス 丸岡すみ子
久々に娘家族と去年今年
はじけゆくシャンパンの泡去年今年
車浮き流されて行く街出水
降り出せばたちまち冠水街出水
大自然表すブラジル国旗の日
掲げるは秩序と発展国旗の日
ほの甘く香りゆかしきメロンかな
マナウス 橋本美代子
砂時計上下返すごと去年今年
ここまでと壁にくっきり出水跡
点々と屋根だけ残し大出水
インガウーバ伐れば落ちくるプレギッサ
※『プレギッサ』は、ポルトガル語でなまけもののこと。
マナウス 渋谷 雅
アマゾンの変わらぬ風景去年今年
空碧く大河豊かに去年今年
緑濃きアマゾン樹海去年今年
めぐり来る季節を感じ去年今年
街出水車流され茫然と
大出水救助待ってる屋根の上
おやつ時優雅な香りメロン切る
黄と緑空にはためく国旗の日
パリンチンス 戸口 久子
なまけもの尾のない猿に似木の葉食ぶ
一夜明け昨日は去年今日今年
メロン切る家族揃っておやつにと
サンパウロ 武田 知子
心には齢重ねず年新た
初鐘たしなみ程の化粧して
占い師東洋街の日盛りに
とどまる陽滑りゆく風汗連れて
冷酒酌む透けしグラスに舞ふ金粉
蝉の声受話器の奥の故郷かな
サンパウロ 児玉 和代
じりじりと音のしそうに肌灼くる
夏来ぬと思ふいとまもなき酷暑かな
夜更しの眼鏡のままに明易し
目を病みて似合ふ筈なきサングラス
緑陰の影のうすらぐ日の盛り
サンパウロ 西谷 律子
何しても可愛い仕草初笑い
今日一と日の心を解いて髪洗ふ
ブラジルへ帰って来たと賀状来る
水撒いて一陣の風巻きおこす
風鈴の窓を開ければ勇み鳴る
サンパウロ 西山ひろ子
日のほてり残る狭庭や月見草
目立つ事好きな爺婆半ズボン
幾つもの病味方に深む夏
風見鶏埃まみれや残暑光
斜かいに片肌あらわ夏のシャツ
サンパウロ 新井 知里
初夏の海さわってなめて戻りけり
久しぶりポンデアスーカルの初夏の花
新緑の野山眺めてバスの旅
初夏の陽を受けて輝くリオの海
夏のリオ厳しき顔のキリスト像
サンパウロ 林 とみ代
不況の世のサンタクロースの吐息かな
汚職して国は破産に年果てる
大胆な愛のいれずみ夏の肌
マニフェスト盛となりしサンパウロ市かな
ボーナスを納めしはずの財布今
サンパウロ 竹田 照子
椰子の葉の枯れ落ちて行く暑さかな
蝉時ぐれピラシカーバの森に聞く
りんと咲く草花見習い今日生きる
夏深し洪水に泣く北の民
夕立に息子の帰り案じおり
サンパウロ 三宅 珠実
宝石の値段に比べトマト買う
日の高き退社時刻や夏時間
味噌煮よしサラダ尚よしジロー好き
乱舞する裸の祭典カーニバル
お茶うけに母の好みし茄子漬
サンパウロ 玉田千代美
今日一と日心満ちたる春の旅
旅の夜の心ゆくまで宿どまり
囀を遠く近くに旅の宿
ざっくりと混ぜる赤飯春の食
新春や馳走も省き病みて臥す
サンパウロ 山田かおる
老いのせい暑さのせいと出不精に
おしゃれする気にもなれないこの暑さ
ハイピスカ真夏の太陽に輝けり
夏の朝老女三人孫自慢
真夜中に優雅な真白き月下美人
サンパウロ 平間 浩二
紫陽花の毬に重たき雫かな
せせらぎの音の清しき夏料理