現在、ブラジル国内で激震を招いているルーラ前大統領の、「逮捕を避けるのが目的では」とされる官房長官就任問題。17日に就任式を行なったものの、地方裁判所が次々と差し止め命令を出し、最高裁にも違法を求める訴状が殺到中の状態で、さらに街を歩けば、反ルーラ派が「ジウマが罷免するまでここを動かない」くらいの勢いで抗議運動を継続するありさまだ。
そんな最中、親ルーラ派も18日に擁護デモを行なうも参加者は全国で13万人程度と寂しいものとなっている。
国際世論的にもジウマ、ルーラ氏の両氏を擁護する声はあまりあがっていないが、そんな中、ベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領が同国のテレビやラジオを通じ、「ジウマ氏とルーラ氏を守れ」とのメッセージを17日に発した。
マドゥーロ氏はその中で「ジウマ氏が当選した日から、彼女の人間としての、女性としての、リーダーとしての尊厳を踏みにじろうとしている人間がいる」と語り、「それはものすごい憎悪だ。わが国でもそういうものは多かったからから、私たちはよく知っている」と語った。
もっともベネズエラでは前任のチャべス政権時代から反政府派への弾圧が問題視されており、マドゥーロ氏も、反体制派の政治リーダーのレオポルド・ロペス氏を「騒乱罪」を理由に不当に逮捕したことで、国連を含む国際世論から批判を浴びている。
マドゥーロ氏はこの放送以前にもツイッターで「ルーラ、ジウマの二代に渡る偉大な政治指導者が政治生命の危機に立とうとしている。世界でこれに手をつないで立ち向かって行かなくては」とのメッセージも発していた。
南米では、チャベス前大統領の時代から、「左翼政権は兄弟」的な空気が強く、ベネズエラとブラジルが懇意な上に、ボリビアのエヴォ・モラレス大統領、ホセ・ムヒカ前大統領以降のウルグアイ、クリスチーナ前大統領時代のアルゼンチンと、連帯意識が非常に強かった。
だが、今回のルーラ氏の官房長官就任に対する国際的な支援の声は聞こえて来ず、マドゥーロ氏もこの件については一切触れていない。
ベネズエラでは、チャべス氏が貧しい人々からの熱狂的な支持を受け、15年近くにわたる強固な左翼独裁政権を築き上げて来たが、マドゥーロ氏の代になり、高インフレや汚職といった問題に、マスコミや裁判所の統制など反政府派に対しての不利な工作や弾圧を行なうなどした結果、妄信的な政府信者も減り、昨年12月の議会選挙で惨敗したいきさつがある。マドゥーロ氏は現在も、この議会を機能させないためにもうひとつの議会を設置するなどの手段に講じている。
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