現在、ブラジル史上最大の汚職事件を担当するパラナ州連邦地裁のセルジオ・モロ判事が、アメリカの経済誌「フォーチューン」の特集した記事「世界のリーダー50人」の中で、堂々13位にランクインする快挙を成し遂げた。
このリストは全世界を対象にしたもので、1位はインターネット企業「アマゾン」創始者のジェフ・ベゾス氏。以下、ドイツのアンゲラ・メルケル首相や、ミャンマーの政治指導者でノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スーチー氏、フランシスコ法王、アップルCEOのティム・クック氏と、世界中の誰もが知っている有名人が上位5人を占めている。そんなランキングで一気に13位に入ったのがモロ氏だ。
「フォーチューン」誌はモロ氏について、「ブラジル政界で起こっている、まるで1987年のアメリカ映画『アンタッチャブル』のような汚職スキャンダルの中で、敢然と立ち向かっている」と称した。さしずめ、同映画でも描かれている1920年代のシカゴのギャング、アル・カポネを追い詰める捜査官エリオット・ネスみたいな存在ということか。
犯罪者に対する、厳しく容赦のない対応は2年前の捜査開始の頃から評判が良かったが、3月4日には、ブラジルの2000年代の経済繁栄を築いたと尊敬されていたルーラ前大統領に対する検査庁からの取調べ要求を堂々と承認し、国民的英雄となっている。
3月13日に行われたブラジル史上最大の全国300万人が参加したデモでも、「ソーモス・モロ(私たちはモロだ)」と書かれた、同氏の顔をプリントしたTシャツを着た国民が多かった。
そうしたこともあり、10日にサンパウロ検察局が本来サンパウロ地裁に要求したルーラ氏の逮捕請求も、モロ判事に渡され、判断を任されたほどだ。この件は、それを嫌ったルーラ氏側が地裁から逮捕されない特権を持つ閣僚入りを図り、強引に官房長官に就任するという事態も起きて、大問題となった。
また、モロ氏の人気を裏付けることが24日にも起こっている。前日23日、最高裁のテオリ・ザヴァスキ判事がルーラ氏の捜査の権限を最高裁に移管するよう命令したことで、モロ氏にはルーラ氏の逮捕命令を出すことはできなくなった。すると、その処分に怒った国民が最高裁前や、テオリ判事の自宅前で抗議デモを行い、テオリ判事の警備の強化が行われる事態となった。
連邦警察の盗聴の公開を、それが前大統領であろうが認めることなどもあり、モロ氏の手腕には「行き過ぎ」の声もあることはある。ジウマ大統領は自身の会話が盗聴記録の一部として公開されたこともあり、モロ判事に強い警戒感を示している。だが、それが「政府対モロ」の図式を強め、モロ氏の人気を高めていることは否定できない。
ブラジルでの裁判官がヒーローになる傾向はここ数年強い。12年のメンサロン裁判の際は、最高裁のジョアキン・バルボーザ判事(現在は引退)がその強硬な態度で政治家を裁き、国際的に注目された。
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